第20章 おまえも一緒
轟からの宣戦布告を受け。
想像もつかないほどの背景を聞かされても。
緑谷の決意は、それでも揺らいだりはしなかった。
「僕も君に勝つ!」
そう言って、足早に去っていく緑谷の背を見送る。
そして、向は真剣な表情を浮かべたまま、轟に視線をやった。
『…私にそんな話をしてくれたのはどうして?』
「…おまえは、相澤先生とどういう関係なんだ」
『遠縁の親戚。それだけだよ』
「それだけ?…浜辺で、トレーニングをするおまえを見た。あの動きはどう見たって、USJで戦った相澤先生そっくりだった」
『…浜辺?』
向は眉間にしわを寄せ、少し考えた後、笑みを浮かべた。
『あー、あんな朝早くから出かけてたの?見かけたなら、声をかけてくれればよかったのに』
「プロヒーローに目をかけられてるもん同士、実力だけで言えば緑谷より、おまえの方が厄介だ」
『だから最近話しかけてくれなくなったの?残念だな、仲良しだと思ってたのに』
ははは、とあんな話を聞いた後でいつも通りに笑いながら、向は出入り口方向を指さした。
『昼ご飯、一緒に食べない?』
「…話はまだ終わってねぇ」
轟は、向の誘いに乗るのか、乗らないのか。
曖昧なままに、歩き始めた。
立ち話する気分ではなくなったのかと、向が少し困り顔になりながら、ゆっくりと歩く轟の後を追う。
「向、おまえもだよな」
『…何が?』
「今日だけの話じゃねぇ。薄々前から感じてはいたが、騎馬戦で確信に変わった。おまえ」
「どうして、個性を全力で使わない?」
「反射を騎馬戦で使えばよかったのに。緑谷の策はそれよりもリスキーで、採用した意図がわからねぇほど、おまえを使うにしてはお粗末なもんだった」
轟は空を見上げながら、両手をポケットに突っ込んだまま歩みを進める。
向は、轟が言う「反射」とは、戦闘訓練の授業時、飯田を瓦礫から守った個性の応用のことを指しているのだと理解した。
「あの反射を15分間保ち続けて、おまえが騎手になれば、本戦出場が危ぶまれることなんて1秒だってあり得なかった。けどおまえは騎手に名乗りをあげるどころか、緑谷の言われたままに個性を使うだけ……危機的状況に陥っても、進言しているそぶりは見せなかった」