第18章 ずっとかさぶたのまま
交渉タイムがスタートして、1分が経過。
生徒たちは各々交渉に足を運び、振って振られてを繰り返す。
予選通過者はやはり身体能力の高いヒーロー科のA組、B組が多く、普通科、サポート科、経営科の生徒は1人2人しか見かけない。
周りを見渡しながら、目的の人物を探していた僕は、クラスメート達からのあからさまな疎外感に少しずつメンタルを削られながらも、ようやくその人影を見つけ、駆け寄った。
「向さん!」
『…出久』
彼女は薄い笑みを浮かべたまま、運営側から支給された絆創膏を擦り傷だらけの自分の指に貼り、呼び声に振り返った。
その傷だらけの姿を見て「どうしたの!?」と目を丸くした僕に、向さんは『ははは』と渇いた笑い声をあげるだけで、求められた答えを返そうとはしなかった。
『1000万Pだって?やるじゃん。それって私のPの何倍?』
「いや、完全にPが高すぎるせいで誰も相手にしてくれないんだ。それで、向さんはもう誰と騎馬組むか決まった?」
『あー、勝己を誘いたいんだけど』
見てよ、あれ。
彼女が指をさした先には、僕たちが居る場所より少し離れた所で、何人もの生徒たちから勧誘を受けるかっちゃんの姿が。
『3位通過200P…個性も有能だし、勝つ気持ちも人一倍強い。あの人気はわかるけど、なんだか釈然としないなぁ。みんなゲンキンだよね』
「ほ、ほんとだ……あのさ向さん、良ければ僕と組んで欲しいんだ!かっちゃんとは違って個性もまだよく見せてないし、信用が薄いとは思うんだけど…」
『へぇ、出久と?』
彼女は腕を組んで、一考の余地あり、という態度を見せた。
そして少し考えてくれた後、うーん、と小さく唸って、僕に困り顔を向けてきた。
『…組みたい気持ちはあるけど、1000万Pはやっぱり持ち続けるより終盤で取る方が定石な気がするなぁ』
かといって、勝己が5Pの私と組んでくれる望みは限りなく薄いし。
彼女は色々と考えを口にしながら、最終的な結論を下した。
『勝己と組むと、本戦に出れる気がするんだ。私も一応、有名事務所と繋がりを持ちたいからさ。心苦しいんだけど、勝己に一度聞いてみてから、出久のこと考えていいかな』
「えっ」