第17章 良いとこ見せたいお年頃
ーーー雄英体育祭、本番当日。
「皆、準備は出来てるか!?もうじき入場だ!!」
戦闘服ではなく、学校指定の体操着に身を包んだ1-Aの生徒たちは、これから開催される開会式への入場を今か今かと待っている。
クラスごとに割り当てられたその控え室へクラス委員長同士のミーティングから戻ってきたばかりの飯田が、ハリのある声でクラス全員に呼びかけた。
『うん、出来てるよー』
「向くん、返事をありがとう!」
律儀に反応を返す向を含めたクラスメート達は、それぞれ好き勝手に待ち時間を過ごしていた。
そんな和やかな雰囲気が流れる中。
緊張してそわそわと落ち着かない緑谷の元へ、至極落ち着いている轟が近づいてきた。
「緑谷」
「轟くん…何?」
「客観的に見ても、実力は俺の方が上だと思う。おまえ、オールマイトに目ぇかけられてるよな。別にそこ詮索するつもりはねえが…」
おまえには勝つぞ。
突如、告げられた宣戦布告。
ピリついたその場の空気をいち早くどうにかしようと動き始めたのは、切島だ。
「急にケンカ腰でどうした!?直前にやめろって…」
「仲良しごっこじゃねえんだ。何だって良いだろ」
肩を掴んで制止してきた切島の腕を、轟が鬱陶しそうに振り払う。
仲良しごっこ、という言葉の途中で、轟が一瞬向を見たが、すぐにその視線はまた、彼が敵視しているらしい緑谷の方へと向かってしまう。
「轟くんが何を思って僕に勝つって言ってんのか…は、わかんないけど…」
そりゃ、君の方が上だよ。
実力なんて大半の人に敵わない。
客観的に見たとしても。
ネガティブ発言に切島がフォローを入れようとするが、緑谷はそれを聞くことなく、言葉を続けた。
「でも、皆…他の科の人も、本気でトップを狙ってるんだ。僕だって…遅れを取るわけにはいかないんだ」
「僕も本気で、獲りに行く!!」
真っ向から戦う意志をぶつける2人を遠巻きに見ていた向が、隣に座る爆豪を見た。
予想通り、爆豪は額に青筋を浮かべており、それを見なかったことにした向は、また轟と緑谷に視線を戻した。
(…宣戦布告か)
『かっこいい』
そんなことを考えながら、呟いた向の独り言。
それを聞き、爆豪は目を見開いた。
「…………………………あ?」