第8章 家庭訪問の時間
(学峯サイド)
今日から家庭訪問。この数日間はお預け…ということか。
教室に入り、彼女の姿を見る。
親友の倉橋ひなのと楽しそうに笑っている。
あの笑顔を、いつか私にも向けてくれることはあるのだろうか。
家庭訪問4日目ーー。
今日は、彼女の家に行く。
私はあえて、最終日の一番最後の時間に彼女の訪問を入れた。
少しでも長く、まぁといたい…。
ふと横を見ると、ケーキ屋が目に入る。
気がつくと店内に入っていた。
店員『いらっしゃいませ!いかがなさいますか?』
学峯『あぁ…好みが分からないので、無難なものがいいんだが…。』
店員『では、当店オススメのオレンジ卵を使ったプリンはいかがでしょうか?人気商品であと2つだけになるんですが…。』
学峯『では、2つ共いただくとしよう。』
プリンの入った小包を手にインターフォンを鳴らす。
カチャッ…。
桃色のワンピースを着て、髪を軽くアップしたまぁに思わず触れてしまいそうな衝動を抑え、『お待たせしました。』と声を発する。
通された部屋に、彼女らしさを感じる。
白と薄い桜色をベースとした家具や小物。
必要なモノだけが並べられ、無駄がない。
が、ベッドにあるぬいぐるみが目に入る。
白いカラダにマシュマロのようなボディ。
絵文字の様なカオ…。
好きなキャラクターなのか?
大事にベッドに置かれているそれを横目で見つつ、私はプリンの小包を手渡す。