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【ハイキュー】駒鳥が啼く頃、鐘は鳴る【木兎&赤葦】

第3章 秋霖 ②




「俺さぁ、ずっと不思議だったんだよね」

歌い終わり、意味深な笑みを見せる天童。
ジッと獲物を見つめる蛇さながら、その視線には外部も内部も丸裸にされてしまいそうな不気味さがあった。

思わず一歩たじろいだ八重に、天童はニッと尖った口の両端を上げる。


「どうして駒鳥を殺した雀を、誰も咎めないんだろう?」


それは、幼い頃に駒鳥の歌を教えてもらってこのかた、疑問にすら思わかなかったことだった。

「駒鳥を殺した理由すら誰も追及しない。さも当然のように、ね」

天童の言う通り、この歌では駒鳥を殺した犯人が自ら名乗り出ているというのに、誰も彼を咎めることはしない。

「考えたんだけど、誰も雀の罪を問わないのは・・・」

天童は両腕を反対側の袖に入れながら、僅かに曇った空を見上げた。
その色は故郷を思い起こさせる、憂鬱な灰色。


「駒鳥が死ぬことを誰もが望んでいた」


動物達は仮面を被り、駒鳥の死を悼んだ。
彼に送る讃美歌も、鐘の音も、全ては偽りだったらどうだろう。


「もしくは、駒鳥自身が死ぬことを望んでいた」


この空で飛ぶことができないのなら、鳥は生きていても仕方がない。
死が彼にとって幸福だったなら、友は喜んでそれを与えただろう。

雀の弓矢は駒鳥にとって救いだったのかもしれない。


「ねぇ、八重ちゃんはどう思う?」


英国の空から日本の空に連れてこられ、今は木兎家という籠の中。
お前はここで生きていけるのか?


「なんで雀は───駒鳥を殺した罪に問われないんだろうね?」


八重は殺された駒鳥でもないし、殺した雀でもない。
なのにその質問に身体中の血が凍るような錯覚に囚われた。

天童の声は決して低くはないし、話し方も柔らかなのに、彼の言葉を聞いていると何故か恐怖を感じる。
何もかも見透かすその視線に全身が絡め取られそうだ。

彼はまるで、獲物の周りをゆっくりと周回する蛇のよう・・・


「───それは・・・」


腹から声を押し出すように八重が口を開いた、その時だった。








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