【ハイキュー】駒鳥が啼く頃、鐘は鳴る【木兎&赤葦】
第3章 秋霖 ②
「さっきそこで君の所の執事サンに聞かれたんだよ。君が昨日歌っていたから気になってたんだって」
「闇路が?」
ああ・・・そういえばそうだった。
父がよく歌って聞かせてくれた歌だが、どちらかといえば嫌いだった。
童謡というよりは鎮魂曲のようで不気味だと思っていたからだ。
しかし昨日は冷たい雨が降る中、木兎家の屋敷に向かう途中でふと口を突いて出たのは、その憂鬱な童謡だった。
「“封、切る土” “靴、露瓶”、こんな歌知っているか?って聞かれたんだけど、どう? あってた?」
フウ・キルド・クツ・ロビン・・・
そうか、英語を知らない日本人が聞くとそう聞こえるのか。
「ええ。昨日私が闇路の前で歌ったのは、“Who Killed Cock Robin”で間違いありません」
「やっぱり!! 俺ってすげぇ!」
嬉しそうに背中をのけぞらせた天童。
闇路の滅茶苦茶な歌詞から正解を導き出したことから見ても、ただ“察しが良い”というだけではない。
ヘラヘラしているが、恐ろしく頭の切れる男だ。
「でも女の子が好んで歌う歌じゃないね。この歌、最後まで知ってる?」
───この男、本当に何者だろうか。
ただの平民だったら牛島家に居候などできないだろうし、この歌だって知っているはずもない。
すると天童は猫背気味のダランとした体勢のまま、再び歌を口ずさみ始めた。