【ハイキュー】駒鳥が啼く頃、鐘は鳴る【木兎&赤葦】
第6章 冬霞
「だから俺は待つよ。“お前が”俺と結婚してもいいと思えるようになるまで」
「光太郎さん・・・」
「けど、他の奴と結婚したいって言われたら泣いちゃうかもしれないから、それだけはやめてね」
冗談っぽく言っているが、それが本心であることは八重にも強く伝わっていた。
数カ月、一緒に暮らしてみて分かったこと。
光太郎はその明るさに比例するかのように、とても寂しがり屋な性格だ。
そのせいか、光太郎のそばには常に赤葦がいるし、赤葦が不在の時は京香か闇路がいる。
「光太郎さん、私は・・・まだ混乱しています」
「うん」
「時間を・・・ください・・・・・・」
「うん」
光太郎はニコリと笑いながら八重の頭を撫でた。
そして膝の上から降ろすと、異国の面影を残す瞳で真っ直ぐと見つめてくる。
「八重は俺達のお姫様だ。お前の言う事なら何でも聞く」
だからその変わりに諦めて欲しい。
自由な人生と、一人の女としての幸せを。
木兎家のために、自分の妻として生きて欲しい。
重い沈黙が流れると、それを振り払うように光太郎が壁時計を見て明るい声を出した。
「今日はもう遅い。早く寝た方がいいな」
俯く八重を安心させるように、頭を優しく撫でる。
この部屋はかつて、光臣が日美子と初夜を迎えた場所。
初めての性行為で日美子は傷つき、その結果、悲劇は起こってしまった。
“・・・俺は父上と違うよ”
それは、光太郎がよく口にする言葉だ。
父と同じ過ちは繰り返さない、彼が強く心に決めたことなのかもしれない。
「それでは・・・おやすみなさい、光太郎さん」
「待って、八重! もし嫌じゃなかったら、明日からも俺と一緒に朝飯を食ってくれる?」
「・・・はい、もちろんです」
「そっか! 良かった!」
これまで通り、というわけにはいかないかもしれなが、たった二人だけの家族なんだ。
一緒にいられる時間は大切にしたい。