第1章 初恋
「…グス…ひどいよ黄瀬くん。」
ーファーストキスだったのに…
ポツリと呟くとポロポロと涙が溢れてくる。
「マジで!?じゃなくてチサトっち。なんで泣いて…」
「彼女いるくせに!なんでこんなこと…」
「?…さっきから彼女ってなんのことっスか?オレ彼女なんていないけど。」
黄瀬くんがキョトンと可愛く首を傾げて聞いてくる。
「…う、みんな言ってるよ!わ、私も昨日見たしピンク色の髪の可愛い彼女…だから、」
からかわないで、と言おうとして黄瀬くんの肩が揺れてることに気付く。
「クククッ…それって桃っちの事っすか?有り得ないっスよ。元チームメイトで今は敵っスね!それに彼女には大好きな人がいるっスよ」
「…へ?…でも、すごく優しく笑ってて彼女のこと宝物でも見つめてるみたいな顔して…」
「チサトっちの話してた時っスかね?顔緩んでるって桃っちにも言われたっス。」
ー『きーちゃん何か雰囲気変わったよ。大切な人出来たんだね。良いなー私もテツくんとラブラブしたいよ。』
「誤解…解けたかな?…ずっとチサトっちに片想いしてたっスよ。」
「…うん。私も…ずっと片想いしてたよ。」
ー黄瀬くんはみんなの人気者で私はただのクラスメイト。
きっとずっと、もうこんな日が来るなんて思って無かったよ。
泣き笑いみたいになってフワリと笑う彼女を見て頬にそっと手を当てる。
ー昨日、森山先輩の胸に顔を埋めて泣いてるとこを見てたんだ……体中の血が沸騰するってこんな感じか?ってくらい頭に血が上った。
先輩を睨みながら、近付こうとしたらスゲェ目で睨まれた。
ー『 大事な妹なんだ…黄瀬。本気じゃねぇなら…チサトの事を泣かすんなら近付くなよ。あいつの事大切にしてくれる奴なら俺の周りに沢山いるからな。』
今朝イラついて睨みつけるオレに警告するみたいに言った先輩の目は昨日の目と同じだった。
誰だよ泣かせた奴…イラつく相手は自分だったっスね。
ーもう泣かせねぇよ。
「黄瀬くん?」
「涼太って呼んで」
キョトンとした後にボンッと音でも出そうなくらい真っ赤になった彼女が
「…りょ、涼太く…んぅ」
恥ずかしそうに名前を呼ぶ姿に我慢出来ず先程より深く唇を塞いだ。