第28章 秋の夜長に春ひとつ
「僕…カズのこと、好き…だよ…」
直接胸に呟くかのように
顔を埋めたままそっと聞こえた声
小さくてもはっきり聞こえた言葉に
心臓がものすごい早さになって
嬉しい、とか…
本当に?とか…
色んな言葉が頭の中では浮かぶのに
どの言葉も口から出てこない
言葉の代わりに腕の中の
愛しい人をぎゅっと抱き締めた
「ここで過ごすようになって…
最初の頃は、さ…
潤のこと思い出したりしてたんだけど…。
カズと一緒に過ごしていくうちに…
最初に思ってた、いい子だな…って気持ちが徐々に…好きって気持ちに、変わってた…」
「…大野、さん……」
やっと出た言葉に
潤んだ瞳がゆっくり見上げてくる
「これからも…
ううん、これからは。
ここの味をカズと一緒に…
残していきたい…
ただの仕事仲間として、ではなく…
大切な、パートナーとして…」
「………」
「え、だ、だめ……?」
「…いや…よろしく、お願いします……」
予想外の言葉に沸き上がる涙
それをこらえるのに
胸が詰まって
口にした言葉も詰まる
じ…っと見上げる瞳がそっと閉じられて
柔らかな唇にそっと自分のを重ねた
- end -