第23章 君がいいんだ
「あ、こら!ダメだよそっち行っちゃ!」
いつものように部屋を清掃していると
慌てて外へ駆け出そうとした柴犬
「ほら、雅【みやび】…おとなしくして?」
ひょいっと抱きかかえると腕の中で少し暴れる
《お散歩したいよっ》
「だーめ!まだ怪我治ってないんだから〜」
《…はぁい》
おとなしくなった雅を下ろして
隣の部屋に移る
「ラブ、おはよ〜♪」
ラブはスピッツ独特の甲高い声で吠えて
部屋の中をぐるぐる回り出した
「ごめんね、すぐ終わらせるからね〜」
部屋に散ったふわふわの白い毛
掃いて綺麗にして
ボトルに水を補充した
「はい、綺麗になった♡」
柔らかな毛に惹かれて頭を撫でる
《やめて、触らないでっ!》
「ご、ごめん…怒らないで?」
慌てて離して
バイバイ、と手を振って
また隣の部屋へ
「蜜柑、怪我の具合はどお?」
毛布の上で動けない蜜柑の
綺麗なオレンジ色の体を撫でる
《…人間なんて、大嫌いよ》
「…蜜柑……」
《こんな目に合わせた人間なんて大嫌い!!》
蜜柑の大きくて可愛い瞳が
憎しみで満ちていた
「…早く、治そうね」
《………………》
お腹の痛々しい包帯を軽く触って
また隣の部屋へ
これが僕の毎朝の日課
ここは、動物保護施設
『Green island』
雅も、ラブも、蜜柑も、他の子も…
ここにいる子はみんな、心か体
もしくは両方
傷を負った子達ばっかりだ