第1章 カクテルに想いを乗せて
- 松本 side -
ーーー都内某レコーディングスタジオ
「櫻井くん…休憩する?」
「す、すみません…」
ソロレコーディング真っ最中の翔さん
なぜだか今日は調子が出ないようだ
さっきから小さなミスが続いているのを見かねたスタッフさんが休憩を促した
「っはぁ〜…」
スタジオから待機スペースに戻ってくるなりどかっと座ってテーブルにうつ伏せになる翔さん
「またみたいっすよ…彼氏にフラれたみたい…」
ゲームに興じていたはずのニノが俺の耳元でそう囁く
またか…
長い付き合いだからメンバーのそういう話は聞くが翔さんは特にそこの話は尽きなかった
来るもの拒まずの翔さんだからだろうがあまりにも最近はその間隔が短い
そしてフラれる度に気落ちして今のような状態に陥るが、俺は翔さんがそうなると逆に心が軽くなる
「翔さん…今夜、話聞こうか?」
「いいの?松潤…」
あまり寝られていないのか少し目の下にクマが見える
「いいよ…いつものバーでいい?」
「うん…ありがと……」
気持ちが落ち着いたのか少し険しかった表情が柔らかくなる
「櫻井くん…再開、できる?」
「あ、はいっ!頑張りますっ」
スタッフさんに呼ばれてレコーディングスタジオに行く姿を見送ると打ち合わせしていた大野さんが入れ違いに戻り、向かいに座った
「お、翔くんさっきよりだいぶよくなってる…まつずん何言ったの?」
「まつずんはやめてくれよ、リーダー(笑)」
確かに、さっきより断然いい声が出てる
「翔さんはね、潤くんが支えなんすよ…」
「まつずん、これからも支えてあげてよね?」
「だからまつずんはやめてくれって(笑)」
軽く談笑しながらも目線を送るのはガラスの向こう
歌い終わった翔さんと目線が合う
無垢な笑顔で俺に微笑まれると心が高鳴る
そう、俺はずっと翔さんに片想いをしている
「あんなに優しい笑顔をするのは潤くんの前だからっすよねぇ…」
そうだと思いたいけど、翔さんは俺のことなんか眼中にないよ
だって相談話はされるけど俺に好意があるような、そういう感じを受けたことは今までない
「なんか妬けちゃうなぁ〜…」
「あれ、相葉ちゃん起きたの?」
「みんなうるっさいんだもん、起きるよさすがに〜」
賑やかになる周囲をよそに俺は翔さんをただ見つめていた