第15章 gallant honey
- 大野 side -
俺は今、ものすごく後悔している
いくら恋人のお願いだからって、こんなことまでしてしまった俺自身に……後悔をしている
だって…鏡に映る俺はいつしかCMでやった時と同じ女装姿で
見た目完全女子だからー………
そもそものきっかけはかずの一言からで、
誕生日に何が欲しいかと訊ねたら返ってきた言葉がまさかの『女装した智とエッチがしたい』
巷では〝ホトケの大野〟って言われるほど滅多に怒ったりはしない俺がこの時ばかりはさすがに怒った
…けど
『おまえっ!女子とヤりたいなら浮気でもなんでもしてこいっ!』
『違うわっ!俺は女子とヤりてぇんじゃねぇ!可愛い智とヤりてぇんだよっ!』
ふざけてもない真面目な顔でそんなこと言われたらもうそれ以上は何も言えなくなって
いくら嫌だと拒否しても頑なに『誕生日に欲しいものはそれしかない!』の一点張りで
仕方なしに俺がかずの要求を飲んで、今に至るー……
改めて鏡に映る俺の姿をまじまじと見つめる
俺の女装も結構評判良かったけどさ
絶対かずの女装の方が可愛いのに…
口にして言おうものなら怒るのは目に見えてるから絶対に言わないけど…
鏡の前でくるり、と一回りするとワンピースの裾がヒラヒラして足元スースーする
あーあ…こんなことのために、スタイリストさんやメイクさんまで騙してバッチリ準備しちゃうとか本当…
「俺ってばなんて甲斐甲斐しい…」
ため息とともにそう独り言を呟くと玄関の扉が開く音がして
これを望んでいたかずが帰ってきたようだった