第14章 『最愛』
- 松本 side -
「……はぁ」
楽屋で向かいのソファに腰掛けるニノがゲームをしながら溜息をこぼした
いつもなら意気揚々とやっているそれがあまり楽しくなかったのか、それか何か悩み事でもあるのか、早々にゲーム機をテーブルに置くと、ソファに背を預けて天を仰いだ
「……どうか、したの?」
「…うん、ちょっと、ね……」
天を仰いだまま返ってきた言葉は弱々しくて
わかりやすいほどに気落ちしていた
「俺で良ければ、話…聞くよ?」
まだ他のメンバーも来ていない、2人きりの楽屋
相談に乗るためにニノの隣に移って腰掛けると天を仰いでいたニノが体を起こしてゆっくり話し始めた
「実はさ…今、俺ドラマやってるじゃん?」
「うん…」
「外科医で、命を救う役やってんじゃん…?」
「そうだね」
「でも、ね…そのドラマ撮り始めてすぐくらい、かな…大好きだった叔母が…亡くなって……」
淡々と話していたニノの手が少しずつ震えて来て
手元を見ていた目線を顔までゆっくり上げると綺麗なブラウンの瞳にうっすらと涙が浮かんできていた
「身近な人を失ってすぐ、だったから……精神的に結構キツくて…でも、頑張んなきゃって…」
悲しさに暮れていた中、全然違う人物を演じないといけない
しかも、ただの人物ではない
…命を救う医者、という人物を…
もし、俺がニノの立場だったらどうしただろう
演じられていた、だろうか…
心の葛藤と闘いながらやっていたのか………知らなかった
「…それは、辛かったね…」
静かに頷いたニノの顔から一雫溢れて手の甲に落ちたのが見えた時
気づけば震えるニノの体を引き寄せて抱きしめていた