第1章 カクテルに想いを乗せて
- 松本 side -
ー 数日後 ー
いつものバーに仕事終わりで翔と訪れる
この前、初めて気持ちが通じた以来訪れていなかったここ
あの日、俺が満足するまで続けた行為に多少なりとご立腹ではないか、と心配していたから好きな酒でご機嫌をとるために来た
平日の深夜だから相変わらず俺たち2人の貸切状態だ
「いらっしゃいませ…今日もテキーラ・サンセットになさいますか?」
カウンターに腰掛けるなり翔にいつものお酒か訊ねるマスター
それにふっ、と軽く微笑んで返す
「いや、今日は…キールをください」
キール…そのチョイスにこの前の俺の暴走は怒られていないことを知ってすこしホッとした
「かしこまりました…松本様は、どうなさいますか?」
「そうだな俺は…」
いつものベルベット・ハンマーでもいいけど今日は別のにしてみようか…
悩んでオーダーを口にしないでいると
「彼には、XYZを…」
マスターに俺のカクテルをオーダーする翔
翔の言葉にマスターはすこし含みのある笑みを漏らす
さっそく手早く作っていくマスターの姿を見ながら翔の耳元で訊ねる
「ねぇ、翔…XYZって、どういう意味…?」
「あれ、知らないんだ…潤のベルベット・ハンマーに対する俺の答え、だよ…」
あのカクテルの意味、知ったのか
それに対する答え?なんだろう…
考えを巡らせていると
「お待たせしました、キールとXYZです」
目の前に届くカクテル
それを手に取りゆっくり飲んでいく翔を尻目にマスターに耳を寄せるように促す
「ね、マスター…XYZって、何て意味…?」
「意味はですね………………、ですよ…」
俺の耳元で優しく教えてくれたカクテルの意味を知って驚く
「私はすこし、備品を取りに裏に行きますがごゆっくりどうぞ…」
気を利かせてくれたのか席を外したマスター
「潤…?どしたの…っ、んっ…」
空いたグラスを手にしたまま俺を見やる翔の肩を引き寄せ触れるだけのキスを贈る
「翔…俺からも、あとでXYZ…捧げるよ」
俺の言葉に穏やかに微笑み深い口づけが返ってくる
やっと叶った俺の恋
大切にするし、もう2度と恋でテキーラ・サンセットを頼むことがないように努力する
俺も、永遠にあなたのもの…
- end -