第10章 不測の事態
『あれはケガしたばっかりの時に上手くカトラリーが使えな···待って、食べさせっこ?』
楽「してたんだろ?」
『いやいやいや、ないよ。お箸が上手く使えなかった時に、ちょっと···まぁ、お世話になったけど』
しどろもどろになりながらも言えば、楽はふ~ん?と私のは顔を伺いながらニヤリと笑った。
なんかこういう時の楽って、だいたい変なこと考えてそうだけど···まぁ、気にしたら負け?かも。
楽「そんな慌てなくても誰にも言わねぇけどな?」
『だから違うって言ってるのに』
楽「ま、アレだ。親子丼が熱かったらフゥフゥして貰え?」
『あのねぇ···』
違うって言ってるのに···とブツブツ言えば、それを見て楽がまた笑う。
楽「じゃ、俺は戻る。注文入ってたら困るからな···それじゃ、次も蕎麦処山村をよろしく」
次はぜひ···配達は楽じゃない人でお願いしたい。
颯爽とバイクに乗って走り去る楽を見送ってから寮の中へと戻れば、四葉さんが今か今かと私を待っていた。
『先に手を付けてても大丈夫だったのに』
そわそわする様子を見て笑いながら言えば、四葉さんがそれはダメだから!と力む。
環「ヤマさんが、俺が先に食べてたらマリーの分がなくなるからダメだって」
『そういう事か···それなら、』
と言って自分用の茶碗を出し、そこにスプーンを使って少しだけ取り分けてから丼を四葉さんへと寄せた。
『はい、どうぞ?』
三「また愛聖はちょっとしか食べないのか?」
万「また、って?」
大「あ~···最近ちょっと食欲落ちっぱなしみたいで···ダイエットか?」
ちょっと二階堂さん?
壮「大和さん!そうかも知れなくても、それを言葉にしたら失礼ですよ」
『ご心配なく!ダイエットはしてませんから。ただちょっと、これくらいで大丈夫かな?って感じだから。あ、そうだ···私ちょっとやる事があるから、このまま部屋で食べて来ますね』
いろいろと追求される前にトレーにそれぞれを乗せて立ち去る。
みんなで食べるとか、失敗したなぁ···と思いながら部屋に入り、ミニテーブルにトレーを置いた。
今もまだ時々、知らない番号からの着信が届くスマホを見つめながら、どうしたものか···と溜息を吐く。
そんな時でも、また登録していない番号からは着信を続けていた。