第8章 新たな一歩へ
いよいよミュージックフェスタ当日。
今日は私も早い時間から局入りして、下岡さんとの最後の打ち合わせをしながら準備を進めていた。
アイドリッシュセブンのメンバーも、簡単なリハがあるから局入りしたのは知ってる。
···というより、四葉さんからなぜか逐一ラビチャで報告されて動向が分かるというか。
髪を梳かしながらスマホを見れば、ちょうどそこに四葉さんからのラビチャのメッセージが届いた。
環 ー 今から俺ら、リハーサルやるんだって。マリーも見に来れるなら来てよ ー
来てよ···って、言われても。
時間を見れば、本格的に支度を始めるにはまだ少し時間に余裕があった。
せっかくだし···行ってみる?
同じ事務所なんだから、リハを覗く位は大丈夫だし。
そうと決まれば、急がないとリハ見れなくなっちゃう!
スマホを握り締めて、通い慣れた通路を急ぐ。
ホールに着くと、ちょうどみんなが立ち位置を確認しているのが見えて、音合わせはこれからだと分かって、間に合ってよかった···とホッと胸を撫でた。
環「あっ、マリーだ!」
私がいることに気が付いた四葉さんが、ステージ上で大きく手を振ってくる。
私もつい、手を振り返してしまったけど、そうじゃなくて!!
身振り手振りをしながら、四葉さんにちゃんとリハに集中して!と繰り返した。
なんだかこれって、授業参観の時のお母さんがすることだよね?
そう思うと笑いが込み上げてしまって、思わず口元を隠した。
直後に音が入り、みんなの歌う姿を見る。
ほんの数回しか練習してるのをレッスン場で見かけたことがないけど、こうやってステージで歌う姿を見ると···やっぱりみんな、カッコイイと思う。
本番になって、衣装もちゃんとしたら···きっと、もっと輝いた姿を見れるんだ。
そう考えると、ワクワクとドキドキが1度に訪れて来て、それと同時に緊張もする。
みんなの頑張りを、1番近い場所で見る事が出来るんだ···私。
駅前の小さなステージでもなく。
決められた人数しか入れない野外ステージでもなく。
全国ネットのテレビ放映される、この···大きなステージで。
凄い役得?!
踊りだしそうな胸を押さえながら、大きく深呼吸をする。
私もみんなに習って、一生懸命に役目を果たさなきゃ···と、ひとり小さく頷いた。