第1章 輝きの外側へ
神様なんて、いるとは思っていない。
だけど今は、ほんの少しの希望でも···縋りたいと空を仰ぐ。
見上げた夜空には星が瞬き、こんな都会の夜でも必死に輝きを放つ彼らの光に胸が熱くなる。
『はぁ···これからどうしよう』
後悔先に立たず···とは、よく言ったものだと今更ながらに実感する。
数日前。
八乙女社長から見限られた私は、その日の内に与えられていた部屋を追い出され、路頭に迷っている。
社長に見限られた理由、それは。
それまで事務所で散々お世話になっていたのに、社長の考えに従えなかったこと。
一般的に言えば、ただそれだけで着の身着のまま放り出されたのか?と聞かれてしまうだろう。
私だって大きな事務所に所属しているタレントのひとり。
名前が売れるまで大金を使って育てて貰った恩だってある。
ドラマや映画、それに···数曲の歌に至るまで、社長から言われる通りに頑張って来たつもりだ。
社長から言われた事が、多少の自分の意に反する事であっても···従う事も多かった。
でも、仕事も低迷して来ていた私に出された事は。
「人気を維持出来ないヤツには用はない。ここにまだ居たいのなら、その体でも何でも売って自分で仕事を探して来い!期間は一週間だ。それが出来ないのなら、お前はクビだ!」
体を···売ってでも···?
そんな事、出来るわけない。
だけど最近の私の仕事量を考えたら、従わない訳にはとも思えてしまう自分もいて。
そんな時、偶然にもそれらしい含みの誘いをかけてきた関係者に食事に誘われ···大きなホテルの一室まで連れて行かれた。
覚悟を、決めるしかない?
だけど···怖い。
これはもしかして、夢?
それとも、ドラマ撮影のワンシーン?
何度も繰り返し自問自答して、自分の体を抱き締めた。
経験なんて、ない。
いつか愛する人と···なんて思う私が甘いのか、これまで撮影以外に他人に肌を晒したことすらない。
そんな私が···仕事の為に、事務所をクビにならない為に···?
私は、どこまで堕ちるのだろう。
「佐伯ちゃんが物分かり良くてよかったよ。さ、先にシャワー使っていいから」
そっと首筋を撫でられ、ゾクリと鳥肌が立つ。
『いえ、私は···』
「オレは別に、どっちでもいいんだけどさ?」