第5章 ヒカリの中へ
小「じゃあ、日取りはこれで行こう」
移籍発表をする決意が固まってから数日、何度となく社長の予定と合わせながら···やっとその日が決まった。
私はいつでも大丈夫ではあるけど、同席してくれる社長の予定と照らし合わせないと細かい日程が決められなかったから。
『はい。いろいろとありがとうございます。それから、社長···ご迷惑をお掛けして、』
小「何言ってるんだい、愛聖さん。ありがとうもごめんなさいも、まだ僕が聞かされるには早すぎるよ?これからキミはどんどん働いて貰って、僕が忙しさに根を上げてからお礼と謝罪はたくさん聞くから。たくさん仕事させて貰ってありがとう、とか。忙し過ぎてごめんなさい、とか」
ね?と穏やかに微笑む社長を見て、私も思わず笑ってしまった。
『そんな日が、来るといいですけど···』
小「もちろん来るさ。八乙女の所にいた時から、キミをちゃんと評価してくれている人はたくさんいる。もちろん、八乙女も含めてね。だから、あっという間に忙しくなって···休みが欲しい!って言っても、ゴメンそれはムリ!って僕が謝る日がね」
『そんな日が来たら、一緒にエスケープしちゃいましょうか?』
小「いいねぇ!じゃあみんなに内緒で温泉とか行っちゃおうか?若い女性と温泉!楽しみだなぁ。あ、もちろんその時は混浴にしようか」
『紡さんに怒られますよ、社長···』
サボる方にノリノリになる社長に釘を刺せば、あからさまにガッカリする社長にまた笑ってしまう。
小「僕がもう少し若くて独身だったら、誰にも邪魔されず逃避行!とか出来るのになぁ、残念···」
『社長はそのままでも素敵だと思いますよ?いろいろ背負って働く姿は憧れますし、尊敬もします』
小「えっ?!本当?!」
『もちろん本当です。私は小さい頃に父を亡くしてますから、生きていたらきっと···社長と同じくらいの歳かなって思ったりしてます』
小「それって普通にお父さん的な立ち位置じゃないか···あ、いや、まぁ···紡くんがいるから僕はしっかりお父さんなんだけども」
う~ん···と考え込む社長と顔を合わせて笑い合いながら、程よく冷めたコーヒーに口を付けた。
小「当日は、衣装とかは用意するけど希望はあるかい?」
『衣装、ですか?それなら私···』
ぜひ着たい物があるからそれで···と告げた。