第4章 カケラの眩しさ
前のような···活動。
果たしてそれは、私に出来るんだろうかと考え込んでしまう。
映画やドラマ、CMにと多種多様な仕事はさせて貰ったとは思う。
だけどそれは、私自身が必要で舞い込んで来た仕事ではなく、八乙女社長から指示されて与えられた物が殆どだったから。
同じようにと言うわけにも行かない。
じゃあ、どうやって仕事を?
キャリアを捨ててここでやり直すには、それなりのリスクを···
脳裏にひとりのプロデューサーが浮かび、ゾクリと肌が粟立つ。
···それだけは、何があっても絶対に出来ない。
万「愛聖、ひとつだけ言っとくけど···社長は、愛聖の事をちゃんとひとりの人間として大事に思ってくれてる。だから···」
ー そんな顔しなくていいから ー
さりげなく腕を擦る私にそう言って、万理はゆっくりと瞬きをした。
万「それでは質問の答えをお願いします」
答えは急がなくてもいいと社長は言ってた。
けど今は、私が思う事をそのまま万理に話せばいいんだ。
そう思うと、少し心が軽くなった気もして。
『今後の活動については、まだ分かりません。以前のような幅広い仕事が出来るとは思っていませんし···ただ、私としては···私を必要だと、佐伯 愛聖じゃないとダメだと思ってくれる人からお仕事頂けたらいいな、と思います』
万「もしそれが、生ぬるい考えだと言われても?」
『そう思われる方もいると思いますが、私は移籍させて頂いた以上···現社長のお考えに従います』
これが···私の本音。
『って、小鳥遊社長に伝えて貰えれば大丈夫。私からもちゃんと話すけどね』
万「···分かった。ちゃんと社長に···伝えるよ」
お互いに小さく笑い合って、なんか変な緊張したねとテーブルに突っ伏した。
移籍発表、か。
パッと聞いた感じは、大きな1歩を踏み出した様に見えるかも知れない。
けど、本当はそこがスタートラインなんだよね。
万「愛聖。茨の道が長くても、超えなきゃならない壁がどれだけ高くても···俺はずっと、応援してるから」
『約束だからね?』
万「分かってるって、ほら」
目の前に伸ばされた万理の小指に、そっと自分の小指を絡めた。
万「頑張れよ、愛聖」
その言葉で、絡めた指先が熱くなった。