第21章 ココロ、重ねて
「そうなんだけど、その、それがさ、」
『奏音さん、だよね?』
「え・・・?」
『私もスタッフさんから聞いたの。最初は誰なんだろう?とか思ったけど、スタッフさんが私もよく知ってる人だからって言うから名前聞いたら奏音さんだって』
知って・・・た、のか・・・
「ユキも、知ってるかな?」
『さぁ?それは分からないけど。だってその千ってばずっとあそこでこーんな難しい顔してるし?』
両手の指先で自分の目をムニッと引っ張って変顔を作るマリーに思わずユキの真似?と笑って見せてはいたけど。
そうじゃなくて、なんだろうこの、なんとも言えない違和感って言うか・・・
『千も人見知りするなら自分が出演してる訳じゃない現場に毎回着いてこなくてもいいのにね?音楽担当とかなら、他のは台本見て曲作ったりしてるじゃない?それに、現場に来てるなら来てるでもっと笑顔見せるとか出来ると思わない?』
あぁ、そうか・・・コレだ。
相槌を打ちながらマリーのいつにないマシンガントークを目の当たりにしてオレは確信する。
「なぁマリー。オレ、そんなに頼りない?」
『・・・え・・・?』
ゆっくりと壁に背中を預けながらもマリーを見つめて言えば、それがどんな意味を含めた言葉なのか感じ取ったマリーが戸惑いの声を洩らす。
「本当は凄く、不安なんだろ?・・・あの子と仕事するの」
『別に、そういうの・・・ない、よ。だって仕事は仕事だし』
「嘘だね。怖いとか不安だとか、オレに隠さなくていいよ。忘れちゃったの?オレが前に・・・マリーに言ったこと」
『それは・・・』
さっきまで饒舌だったマリーが途端に顔色を変えて俯いた。
「忘れてないんだったら、言ってみてよ?オレが言ったこと」
俯いたままのマリーの顔をわざと小首を傾げて覗くようにして言うと、それはそれでマリーの目が泳ぐ。
ユキに比べたらオレは全然マリーとの付き合いは短いかもだけど、それでもオレなりにユキと同じようにマリーの事を近くで見守って来た。
スーパーヒーローとまではなれなくても、それでもユキが大切にしてるマリーを、オレはオレのやり方で同じように大切にしたくて。
だから、どんな時でも・・・力になってあげたい、そう思ってる。