第21章 ココロ、重ねて
❁❁❁ 千 side ❁❁❁
撮影が始まってからずっと、自分の目に映るワンシーンと、カメラワークに寄って変わる視点を確認しながら曲 頭の中の五線譜に音符を並べて行く。
それを細かくメモに残しては、家に帰ったら詰めるか・・・とまたメモを付け足す。
今は龍之介くんと愛聖の病室でのシーンだけれど、これはこれで悲しげな曲調にするか、切なさを全面に出すか・・・さて、どうしようか。
目の前で繰り広げられているストーリーは、愛聖も龍之介くんもお互いにいい感じで撮影が進んでいて・・・ちょっと龍之介くんの距離の近さにモヤモヤする。
まぁ、なるほどね。
あの龍之介くんが演じる医者は彼女、つまり愛聖が演じる女の子の事が好きなのか。
届けられない想い・・・ここは切なげな方がいいな。
龍之介くんとのシーンは切なさ重点的に、とメモ書きをしてペンを置く。
そういえばモモと愛聖は最後お互いの気持ちが通じあって結ばれる結末なんだよな?
いや、言い方を変えよう・・・モモの役と愛聖の役、だな。
モモと愛聖が結ばれる、だなんて僕は相手がモモって想像だけでもなんか嫌だ。
もちろん、本当の現実世界で愛聖がモモを選ぶのなら、僕は全力で応援する・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・と、思う、けど。
・・・・・・・・・・・・・・・多分。
愛聖がなんの苦労もなく幸せに包まれて笑顔でいられるのならとは思うけど、出来ればそれは他の誰かじゃなくて僕でありたい。
全く、笑っちゃうよな。
絶対王者のスーパーアイドルRe:valeと呼ばれていて、僕たちを応援してくれるファンのみんなを幸せな笑顔に出来ていても、本来の姿である折笠千斗は愛聖にとってただの昔馴染みのひとりとしてしか映っていないんだから。
僕もまだまだって感じかな。
それに強大なライバルはモモだけじゃない。
今はどこで何をしているのかさえ不明な男、万だってそうだ。
僕たちがまだ3人でいる頃から、恐らく万は愛聖が好きだった。
歳が離れてるとはいえ、そこらの兄妹くらいの差だろ?
世の中にはもっと歳が離れたカップルや夫婦だっている。
そう考えれば、当たって砕けろって感じだけど。
いや・・・いっそ砕けてしまえ。