第21章 ココロ、重ねて
❁❁❁ 龍之介 side ❁❁❁
『龍?なんか顔硬いよ?』
顔合わせや挨拶が終わって、じゃあ早速といった具合いにここの撮影所で撮れるシーンを始めようかという監督の言葉に、俺たち以外の演者もスタッフも慌ただしく準備をして撮影が始まったのは・・・いいんだけど。
「なんな、ちょっと緊張しちゃってさ・・・アハハ・・・カッコつかないよなオレ」
どうもドラマや映画の撮影となると、事務所が売りにしてるオレのイメージがあるからそういったシーンが多くて腰が引けちゃったりするんだけど。
このドラマだとオレはそういう役じゃないから余計にどう心構えしたらいいのか分からなくて。
『龍は主治医の医師だから、もっとこう・・・ドーン!としてたらいいんじゃない?』
「ドーン、か・・・」
『でも、さすがにTシャツに白衣のドクターなんてそうそう居ないかもだけどね~』
「ちょっと愛聖!?そこはほら、オレが選んだ衣装じゃないからさ、もう少しオブラートしない?」
用意された衣装をイジりながらクスクスと笑う愛聖を見て、少し肩の力が抜ける。
それにしても、愛聖の役どころは難しそうだよな。
マネージャーから台本を渡された時、まだ交渉中みたいだけどこの役は愛聖にって話が出てるって聞いて原作を見たけど、これまでに愛聖が演じた役とはまた少し違う難しさを感じた。
これまでだって難しそうだと思った役は幾つもある。
時代物の時の遊女とか、いや、それよりも前のRe:valeとのダブル主演の時だってそうだ。
あの時は千さんが演じた役の家柄と愛聖が演じた役の家柄同士で交わされた結婚に寄って運命に巻き込まれていく、とか。
結局はお互いを必要として結ばれたけど、その少し後に千さんの役はずっと患っていた病気で他界してしまって。
そんな時に身篭っている事が分かり、後追いしようとしたら百さんの演じた主治医について学んでいた医者が、みたいな。
あの映画はオレもなんかグッと来て泣けて泣けて。
愛聖には言ってないけど、実は買っちゃったんだよね・・・BluRay。
主題曲もいいし、何より当時同じ事務所にいた女の子が体を張った演技だったしね。
・・・脱ぐ、とか。
愛聖はホントそういう所、凄いと思った作品だった。