第20章 明かされた事実
紡「今から番組のプロデューサーさんにご挨拶してきますので、愛聖さんはここで待っていて下さい」
『え?あ、ちょっと紡さん?!』
局入りするとすぐに番組スタッフに楽屋に案内され、紡さんはそのまま慌ただしく楽屋を出てしまう。
いつもなら社長と一緒に私も挨拶回りに出るんだけど、大丈夫だろうか?
まぁ、最近よくご一緒するプロデューサーでもあるから後でスタジオ入りする時に私も挨拶をすればいいかな?とバッグからメイク道具を出しては並べていく。
まだメイクをするには時間が早いし、何となく乾燥してる部屋のせいで喉が渇くからと用意してある飲み物に手をかけ、止める。
以前この局では色んなことがあったせいもあって、社長も千も用意してある飲み物は安易に口にしてはダメだと言っていたことを思い出したから。
それが例え未開封の元であったとしても、なにか起きてからでは遅いと千にキツーく言われているし。
とは言っても、やはり紡さんが戻ってから買いに行ってもらうのは申し訳ないという気持ちもある。
『自販機くらいなら大丈夫だよね?』
紡さんが出ていったばかりのドアを見て、プロデューサーのところに行ったのならまだ戻らないし・・・と、バッグから財布とスマホを出して楽屋を後にする。
人がまばらな通路を歩き、確かこの辺に自販機あったよね?と見渡せば、少し先にそれが見え、あったあった!と駆け寄った。
のは、いいんだけど!
『釣り銭切れ・・・って。しかもキャッシュレスでも買えない自販機とか、テレビ局なのに?』
幾分か形が古いタイプなのか、ICカードも使えない自販機だった為どうしたものかと息を吐く。
っていうか、なんで出かける前に財布の中身確認しなかったんだろう。
何度覗いて探ってみても、財布の中には何人かの諭吉様と、それと同じ位の枚数の千円札に、小銭は?と言えば数十円・・・
売店までは遠いし、きっとまだ開いてもないだろうし。
仕方ない、楽屋に戻って紡さんを待ってから出直すかな?と振り返れば。
「フフッ・・・かーのじょ?もしかしてお困り?」
『うわ、早速出た・・・』
寮を出る時に予想しなければ良かった、と思うような顔ぶれが私の目前に現れる。
千「出たとは失礼だな愛聖。僕はいつでもお前に会いたいのに」
百「オレもオレも!」