第19章 魔法のコトバ
顔をペタペタと触りながら表情筋マッサージを施せば、社長もそれを見て笑った。
小「どうしたいかは君の判断に任せるよ。ドラマだけで行くか、それとも両方を頑張るか。もちろん僕や事務所のスタッフは、君がどんな結論を出しても全力でサポートするよ。どこかに宿泊しなければならない事があったら、防犯上ちゃんと僕が同じ部屋で寝泊まりもする。あ、なんならお風呂も一緒に入っちゃう?」
万「社長?それはちょっとセクハラ過ぎませんか?紡さんに言いつけますよ?」
コホン、と小さく咳払いをした万理が言えば、ちょっとしたRe:valeジョークの真似なのにと社長が苦笑を見せた。
社長、Re:valeの場合はちょっとしたジョークでは済まないんですよ。
千も百ちゃんも、全身全霊を持ってそれを成し遂げようと企てるんですから。
百ちゃんはともかくとして、千なら確実に計画的犯行としてやりかねない・・・と、思う。
『社長、いまのお話なんですけどお返事するまでに少しだけ時間を頂けませんか?1週間・・・いえ、せめて3日ほど時間を下さい。その間に私、作品を読んでみたいんです』
小「3日間でいいの?連絡をくれた監督なら僕も昔から知っている人だし、1週間なら1週間の時間を貰えるけど?」
『3日で大丈夫です。今なら私、ご存知の通りスケジュールはスカスカなので、その時間を使って読み込んでみたいと思います・・・制作側はそれでも大丈夫でしょうか・・・』
作品を知らずに引き受けるのは、私をと推薦してくれる作者にも失礼だからと続けて言えば、社長は大きくゆっくりと頷いてくれた。
小「それじゃ、監督には僕からその様に話しておくよ。どういう結果になっても、それはいつか君自身の宝になる。それを踏まえて作品を読み、結論を出しなさい」
『ありがとうございます、社長』
話はそれだけだからと言う社長に一礼をして、私は万理と共に社長室を後にした。
まず、私のやるべき事はひとつ。
『万理はさっき、原作を読んだ事があるって言ってたよね?私にその原作が載ってる作者のホームページを教えて?』
万「分かった。あ、これこれ。いま愛聖のスマホに転送したから、寮に戻ったら見てごらん?ちなみに帰り道の歩きスマホは危ないから禁止ね」
『分かってる!もう、いつも子供扱いして』
万「子供なのに?」
『ちゃんと大人です!』