第17章 見えない未来
天「バイバイ、陸」
七瀬さんに言って振り返った天が私たちに気付いて、穏やかに聞こえていた天の声がいつもと変わらない声色に戻る。
天「・・・なにやってんの?」
楽「・・・たまたま通りかかったんだよ」
天「たまたま通りかかったにしては、随分と大人数みたいだけど?」
言いながら天が私をチラリと見ては、なにか言いたそうに眉を寄せた。
龍「天を迎えに来たんだよ・・・楽もね。ほら、愛聖はそっちだろ?」
ぽんっと軽めに私の背中を押し出す龍がアイドリッシュセブンのメンバーをグルリと見回してから、私の耳元に顔を寄せる。
龍「みんながいなくて泣くほど寂かったって、ちゃんと伝えてあげなよ?」
『っ・・・龍!!』
内緒の驚き助言に口をパクパクとさせると、龍は楽しそうに目を細めていた。
大「んじゃ、せっかく全員揃ってるし・・・社長に頭を下げる方法でもラーメン屋で考えますかね」
壮「ハハッ・・・賛成です」
紡「内緒で領収書切ります!」
内緒でって、それ大丈夫なのかな?!
だって経理の鬼・・・じゃなくて、有能事務員がすんなり受け取ってくれるんだろうか・・・なんて心配はよそに、早くも何を食べるかで盛り上がって行く。
環「やった!俺チャーシュー麺!」
三「オレはチャーハンセット!」
一「・・・煮卵」
みんな夕飯食べたのに凄いなぁ、なんて傍観していると、先頭を歩き出していた二階堂さんが足を止め私に柔らかな視線を投げた。
大「モタモタしてると、ラーメン食いっぱぐれるぞ?ほら、早く来なさいな」
環「ヤマサン!マリーは俺の隣りの席な!反対側がそーちゃん!」
三「お前ホンットに愛聖のこと好きなんだな。でも、席取りは早いモン勝ちだからな!」
一「私は兄さんの隣りがいいです」
紡「テーブル席が空いてたら、みんなで座れますね」
環「それでもマリーは俺の隣り!」
賑やかな声が響く中で、私は振り返り楽たちにまたね!と手を振って駆け出す。
『私もお腹ペコペコだから置いてかないで下さいってば!』
みんなの顔を見るまでの不安はいつの間にかなくなっていた。
これから先がどうなるかなんてまだ分からないけど、ちゃんと話せば社長だってきっと分かってくれる・・・そんな小さな望みを胸に、わいわいとじゃれ合う輪の中に飛び込んだ。