第15章 shine of the palm
ステージではみんながそれぞれ歌いながら動き回り、そして・・・
陸「みんなも一緒に~!せぇの!!」
七瀬さんが、TRIGGERのファンを含めた観客席に向けてとびっきりの笑顔を見せていた。
龍「・・・オレたちの歌を、TRIGGERを待っていたファンと歌ってるのか?」
天「ブーイングも・・・静かになって来た」
嵐ように降り続いていたブーイングも落ち着き、少しずつステージがひとつになって行くのを見て、3人の表情が比例するように辛さを増していく。
龍「・・・キツイな・・・」
天「そうだね・・・ボクも、自分がこんなに惨めに思えたのは初めてだよ。ファンの期待に応えること、それが出来なかったボクたちの代わりに、彼らがパーフェクトにやってるんだから」
楽「・・・んで・・・なんであそこにいるのが俺たちじゃねぇんだよ!!」
苦しそうに言葉を吐き捨てる楽が、その場に膝を着く。
龍も、天も、そんな楽を見て目を伏せていく。
姉「アンタたち、こんな所にいたのね」
コツ・・・と靴音を鳴らした姉鷺さんが3人の横で足を止める。
『姉鷺さん・・・』
どうしてこんな事に?と聞こうとすれば、それはやんわりと手で制されてしまう。
姉「楽、立ちなさい・・・帰るわよ」
楽「・・・嫌だ」
姉「・・・そう。なら、好きにしなさい。ステージから戻るあの子たちに、みっともない姿を晒したいんなら、いつまでもそこで拗ねてるといいわ」
冷たくあしらう様に言って、姉鷺さんはくるりと踵を返す。
『姉鷺さん!そんな言い方しなくても』
姉「愛聖の言いたい事はアタシにも分かる。けど、これはTRIGGERの問題よ・・・黙ってなさい」
思わず声を掛けてしまった私を振り返ることもなく言って、そのまま姉鷺さんはスタジオから出て行ってしまう。
天「楽、龍・・・行こう・・・これ以上ボクたちの惨めな姿を晒す訳にはいかない」
一瞬の沈黙の後に天が2人に声を掛け、膝をついて俯いたままの楽の腕を引き上げると、重い足取りでスタジオを後にした。
紡「TRIGGERの皆さん、大丈夫でしょうか・・・」
一部始終を見ていた紡さんが、心配そうにその後ろ姿を見送って私を見る。
『そうだね。でもきっと楽たちなら・・・大丈夫だよ』
何を根拠にと言われたら、答えられない。
でも今は、そう言うしかなかった。