第10章 女の子の日
「…飯食えそう?」
目を覚ました私にそう尋ねてくる先輩。
時刻はちょうどお昼を回ったところ…そう言えば今日は朝から何も食べていない。
薬の効果と睡眠をとったおかげですっかり体調も良くなっていた。
「はい…先輩もお腹空いてますよね?良ければ私、何か作りますけど…」
「お前はまだ休んでろ…俺が作ってやるから」
そう言われ、ぽんぽん頭を撫でられる。
何だか毎回作ってもらっているような気がして申し訳なく思ったが、悲しい事に彼の方が料理は何倍も上手だしここは大人しく任せてしまった方が良いかもしれない。
「つーか…冷蔵庫の中なんも無ぇじゃん」
「…ぁ……」
言われてみればそうだ。
ここ最近は新商品の研究の為に他社のレトルト食品や自社の物を食べ比べたりして、まともに料理というものをしていなかった。
決して自炊をサボっていた訳ではないのだけれど…
(…また先輩に呆れられちゃうかな……料理をしないズボラな女だって…)
そう落ち込んでいたが、彼から返ってきた言葉は意外なものだった。
「お前な…研究熱心なのはいいけど、たまにはまとなもんも食えよ?いくら最近のレトルト食品が栄養面にも気を配ってるとはいえ、そればっか食ってたら栄養が偏るぞ」
「……、」
「まぁ…有り合わせのもんで何か作ってやるよ」
そう言って彼はてきぱきと料理をし始める。
純粋に嬉しかった…先輩はちゃんと私の事を理解してくれているんだ…
それから彼はあっという間に料理を完成させた。
冷蔵庫の余り物で作ったとは思えない程立派なメニュー。
「先輩って…昔から料理好きだったんですか?」
「そうだな…。うちは両親が共働きでいつも家を空けてたから、ガキの頃から自然と自分で料理するようになって…高校を卒業してからはずっと一人暮らしだから、自炊歴は結構長ぇかも」
「そうだったんですか」
今までちゃんと聞いた事がなかった先輩の事…
これから少しずつ知っていけたらいいな…
それから料理を食べ終えた私たち(片付けくらいはやると申し出たが先輩に却下された)は、まったりDVDを観たり他愛のない話をしたり、のんびりお家デートを楽しんだ。
そんな中…
「っ…」
不意に私の手を握ってくる彼。
視線を合わせれば、その瞳が甘く熱を孕んでいるように見えた。
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