第5章 エプロンは浮気の合図
嬉しい、美味しい、と言いながら食べる私を、伊豆くんはニコニコと眺めていた。
「気に入ったか?」
「もちろん!」
「じゃあ明日からもオレが作るよ」
「いいの?朝ごはんも?」
「いいとも」
私は晩御飯をぺろりとたいらげた。
さすが野生出身というべきか。魚の焼き加減などは絶妙なものだった。
「ごちそうさま、美味しかったよ」
「そうか、じゃあオレもご飯にしよう」
「えっ…魚全部食べちゃったよ。伊豆くんはもう済ませたのかと思ってた」
「ああ、味見がてら済ませたよ」
そう言う伊豆くんの目がキラリと光った。
嫌な予感がする…。
「オレは桃浜を食べるから」
伊豆くんは腕を伸ばし私に抱きついてきた。
やっぱりか。
パンダ模様のエプロンが、私の視界いっぱいに広まった。
ムッとした様子で伊豆くんがエプロンを外す。
「浮気はダメだぞ」
パンダのイラストと浮気をするほど落ちぶれた覚えはない。