第10章 現在
嫌な予感が確信に変わっていく。
組合が来てから、菜生は1人で行動したがっていた事。苛立ちを隠しつつも、情報収集に明け暮れていた事。夜になると、必ず家を抜け出し、誰かに電話を掛けていた事。──賢治が攫われた時、一緒だった筈の菜生だけが無事に帰って来た事。
その全てが、組合と菜生を結びつけるだけの充分な証拠になっている気がしてならない。
何故組合との関係を隠していたのかは分からない。彼女なりの理由があるのだろう。
でも、これだけは分かる。長い時間を共にした、太宰だけが分かる──云わば、直感のようなもの。
──菜生は、組合に戻る代わりに私たちから手を引けと、組合の団長に頼んだんだ。
取引。考えてしまえば簡単なものだった。
ギリ、と歯を噛み締める。
何故もっと早く気付かなかったのか、と思わず自分を責めてしまう。