第1章 好きです。
今から100年以上前、人類にある天敵が現れた。
彼らと人類の間には圧倒的な力の差が存在し、たちまち人類は絶滅の危機を迎えた。
生き残った人類はマリア、ローゼ、シーナの3つの壁を築き、そこで100年の平和を実現させた。
しかし845年、突然現れた超大型巨人及び鎧の巨人によって全ての日常が壁と共に破壊された。
人類はウォールマリアを放棄、2割の人口と3分の1の領土を失い、活動領域はウォールローゼまで後退した。
850年、再び姿を現した超大型巨人によって壁が破られ、人類はまたも巨人の進行を許した。
2時間後、全ての住民の避難が終了した。
巨人に喰われた者は皆無だった。
迎撃の任につき、犠牲になった兵士を除けば。
審議所での裁判を隔てた後、他の104期訓練兵よりも一足早く調査兵団に入団した初日。
俺は偶然廊下ですれ違った、ある人に目を奪われた。
接点があった訳でもないし、特別容姿が良い訳でもない。
訓練しているところなんて見たこともないから強いのかも分からない。
でもなぜだか目が離せなくて、すれ違う度に目で追い始めて早数日。
いつの間にか...。
その人のことが好きになっていた。
名前も知らない、声も知らない。
知っているのは自由の翼を掲げる調査兵団の一員だということのみ。