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踊り子【気象系BL】

第11章 First contact…


「…とし…? おい、智…」

切羽詰まったような声が耳元で聞こえて、続けて感じた頬の軽い痛みに、俺は瞼を持ち上げた。

「あ…、じゅ…ん…? お…れ…」

自分の口から出た酷く掠れた声に、一瞬にして記憶が引き戻される。

俺は咄嗟に身体を起こすと、乱れたシャツの前を掻き合せた。

「ごめん…、俺…無茶しちゃったよな…」

潤が申し訳無さそうに項垂れる。

その表情が酷く曇っているように見えて…


「謝ってんじゃねぇよ…。誘ったのは俺だし…、それに別に大したことじゃねぇし…」

俺は無理矢理笑顔を浮かべて見せた。

嘘だ…

身体のあちこちがギシギシと軋むのに…
鈍い痛みが全身を支配してるのに…

本当は指先一つ動かす気力すら残ってない程、億劫で仕方ないのに…

それでもなんとか乱れた身形を整えようと、震える指でシャツのボタンを掛け合わせた。

それからはどうやって家に帰ったのかも、ハッキリとは覚えていない。

とにかくこの酷く重たい身体を、一刻も早くベッドに沈めたかった。

でも身体にまとわりついた汗が気持ち悪くて、制服を脱ぎ捨てた俺は、真っ先にバスルームへと駆け込んだ。

ぬるめのシャワーを頭から浴びながら、目の前の鏡に目を向ける。

そこに写っているのは、いつもと同じ見慣れた自分の身体…

なのにいつもと違って見えるのは、処々に残された赤い痣のせいだろうか…

俺はその赤い痣を一つ一つ指でなぞると、一つ大きな溜息を落とした。

俺、何やってんだろ…

たった一回のセックスで、潤に対する裏切りが許されるわけないのに…



俺はその晩、珍しく熱を出した。

母ちゃんは「夏風邪は馬鹿が引くのよ」なんて笑ったけど、その時の俺にはとても笑えるようなジョークではなかった。


後悔、してたから…

たった一人、初めて心許せると思った友達を捨て、夢を追いかけると決めたことを…

潤の愛情を全身に感じながら、何一つ返すことの出来なかった自分を…
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