第10章 Rainy kiss…
マジ…か…
俺、こう見えて…
いや、どう見えてるのか分かんないけど、多分だけどファーストキス…なんだよな…
その記念すべきファーストキスが潤で…
しかも男で…
でも不思議と嫌じゃない。
上手いとか下手とか…なんか分かんないけど、それすらも全然気にならない。
つか、寧ろ気持ち…いいかも…
この頭の芯がぼんやりしていくような感覚?
案外悪くないかも。
「さと…し…? 大丈夫? そんな泣く程嫌だった?」
「えっ…?」
言われて初めて、自分の頬が濡れてるのに気がついた。
何で俺泣いてんだよ…、だって俺…
「ち、違う…、そうじゃなくて…、なんつーか…良く分かんないんだけど、蹴り飛ばす程嫌…ではなかったみたい…」
嘘だ…
本当は、腰が抜けそうになるくらい、潤のこと以外、何も考えられなくなるくらい、気持ち良かった。
「マジ…で? 良かったー。俺嫌われたらどうしようかと思ってたからさ…」
「嫌いなんて…」
思うわけないじゃん…
「俺お前のこと嫌いとか思ったことねぇし…。寧ろすきっつーか…」
勿論、“友達”としてだけど。
「じゃ、じゃあさ、俺と付き合ってくれる? あ、先ずは“お試し”からだけど」
“お試し”だけならいっか…
「…ああ…」
俺は戸惑いながらも、潤の背中に両手を回し、濡れたシャツをキュッと握ると、胸に顔を埋めたまま頷いた。
ほんの軽い気持ちだった。
でも潤はそうじゃなかったんだよな?
潤は、俺みたいに軽い気持ちで告白したわけじゃなかったんだよな?
なのに俺は…
ごめんな、潤…
あの時俺が、もっと真剣に考えてから返事をしていれば…
お前をあんな目に合わせることはなかったんだよな?
そうだろ、なあ、潤…