第3章 忘却とコーヒー
丸川
「おー、今日は風が涼しくて良いな!」
美菜
「……」
屋上に着いてみると、
少し涼しい風が頬を撫でた。
(もうすぐ…秋だな…)
丸川
「はい、コーヒー。」
さっき一階の自販機で買った缶コーヒーを口を開けて渡してくれた。
美菜
「あ、ありがとうございます…」
(これが缶コーヒーか…(・Д・)
良い香り… )
村には自販機なんてなかったから、
人生で初めての缶のコーヒーだ。
丸川
「さて美菜さん。単刀直入に聞くよ。
ご両親は何処に住んでいらっしゃるのかな?
君が、ここで入院をしていると伝えたいから教えて欲しい。」
美菜
「……」
丸川
「今頃…君を心配して捜しているかもしれない…」
美菜
「……」
言って万事上手く行くなら、
とっくに言ってる。
上手く行かないから言わない…ただそれだけ…
なかなか飲めないコーヒーを見つめる。
丸川
「担当医師に聞いたら、君は記憶喪失なんじゃないかと言っていたが…
俺はそうは思わないんだ。君は…」
美菜
「本当に覚えてないんです!!
何度聞かれても…同じです……」
丸川
「………」