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【YOI】銀盤の王と漆黒の王子【男主&勇ヴィク】

第3章 銀盤の王と漆黒の王子


「純、膝の手術受けてからスケート更に綺麗になったし、表現力も引けを取らないよ。僕も頑張るから、純も頑張って」
「ふぅん。ほんなら僕、振付師お休みしてもええ?」
「え?それは…」
「冗談や。でも…有難う。僕も滑るのは好きやし、やるだけやってみるわ」
「今の純なら、絶対大丈夫だよ!」
「アホ、まずはヒトの事より自分の事気にし。ほんならな」
電話を切った純は、直後涙を零しかけたが、
「アカン、涙は勇利が優勝した時まで取っておかな」
乱暴に目を擦ると、気合を入れ直す為に自分の頬を叩いた。

後日開催された大会の男子フィギュアでは、選手全員が一切の妥協を許さず己の持てる力のすべてをぶつけ、氷の上で美しくも熱い戦いを繰り広げていた。
そのような中見事金メダルを勝ち取ったのは日本の勝生勇利で、2位にヴィクトル、3位はJJと続いた。
「見事に四大陸での借りを返されたな。JJのスケート人生第1章は、金メダルで終える予定だったんだが…まあsuch is lifeというヤツか」
そんな呟きを残したJJは今大会をもって現役を引退、以降は学業に専念しつつプロとして活動していく旨を発表した。
「前回の反省を生かしたね。だけど、これで終わりと思ったら大間違いだよ」
「同じ失敗はしないよ。次のワールドも勝って、今度こそ貴方を完璧に皇帝の座から引きずり下ろす」
「…上等!」
表彰台で拳を合わせた勇利とヴィクトルの姿に、周囲から新たな歓声が湧いた。

競技後のEXで名を呼ばれた勇利が、リンクに登場する。
勝生家の厚意で「ゆーとぴあ かつき」で共にTV観戦していた純は、勇利の母親の寛子から「あの子の為に、素敵な振付を有難う」と頭を下げられた。
「勇利は、絶対この大会で金メダル取って、純くんの作ってくれたEXを滑るんだって言うとったけん。あの子にとって純くんは、ヴィっちゃんと同じ位心の支えになってるとよ」
画面の向こうで美しく舞う勇利の姿に、これまでの色々な出来事や想いが、純の脳裏に蘇ってきた。
競技中は何とか我慢していた純だったが、とうとう堪え切れずに畳の上にうずくまると、嗚咽を漏らし始める。
人目も憚らずみっともない泣き声を上げる純の背を、寛子の手が労わるように何度も撫でてきた。
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