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【YOI】銀盤の王と漆黒の王子【男主&勇ヴィク】

第2章 正妻と愛人の密約


稀に衝突する時もあったが、彼らと共にスケートに関わり続けていく事で、純の中でもそれまでのスケートに対する意識が徐々に変化していった。
現役中は決心できずにいた膝の手術に踏み切り、最近では振付師の他に、プロスケーターとしてもアイスショー等に招かれる事が増えてきた。
勇利やヴィクトルがいなかったら絶対に起こり得なかった現状に、純は心から感謝している。
そして、そんな彼らの願いを叶えてやりたいと思っているのも、まぎれもない事実であった。
だが。

「どうしても、勇利には内緒なん?」
「ワールドが終わるまでは、コーチ以外は勇利とは闘い合う競技者同士のままでいたい。まだ大きな大会が残っているし、折角良い調子でシーズンを進んでいる勇利に、余計な事を考えさせたくないんだ」
そこで一旦言葉を切ったヴィクトルは、慣れない正座をすると純に頭を下げる。
「この通りだ。俺の現役最後のワガママに、どうか協力して欲しい」
「…顔上げて下さい!貴方のような人が、僕なんかにそんな真似したらあきません!」
弾かれたように近寄って制止してきた純に、ヴィクトルは首を横に振った。
「これは他の誰にも頼めない。俺の次くらいに勇利を大切に想っているお前にしか出来ない事だから」
「…」
「そんなお前に勇利への沈黙を強いるなんて、どれだけ酷な事か判ってる。だけど…頼む」
いつになく弱々しい懇願の声を聞いた純は、思わずヴィクトルの身体を抱き締めた。
「ホンマ、しんどかったな。この決断を出すまでに、どんだけ悩んで苦労したん…?」
「俺は苦労だなんて、少しも思ってないよ」
純の身体を抱き返すと、ヴィクトルは穏やかな声を出す。
「勇利は俺の想いに十二分に応えてくれたし、競技に復帰しなかったら、ここまでスケートに対してワクワクする事なんてなかった。今の勇利を見て俺の、俺達の出した結論は間違ってなかったって証明できたのが判るもの」
「デコ…」
「勇利と出会わなければ、俺はあの休養からそのままスケートへの情熱を再燃できずに引退してたと思う。でも、勇利やお前のお蔭で、俺は本当に昔以上にスケートが大好きだって、心から思えるようになったんだ。その気持ちは、これからもずっと変わらないよ」
確信に満ちたヴィクトルの言葉に、純は新たな涙を零した。
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