第2章 ‐case1‐ending.
黒尾さんの手が、頬から離れていく。
キスがしたくない訳じゃないのに、何と言えばしてくれるのか分からない。
「…観覧車の天辺でキスしたカップルは、長続きするってジンクスありますよね。
私、結婚願望強くて、重いです。ずっと傍に居てくれる人としか、付き合いたくありません。」
やっと言えたのは、都市伝説みたいなもので。
このジンクスにノって、ずっと傍に居てくれる証明として、キスしてくれないだろうか。
「小熊が重いのは、最初っから知ってんだよ。16歳で、結婚出来る年齢になったら恋愛解禁、だろ?」
返ってきたのは、からかうような笑みだった。
「だから、お前に告った時点で、一生傍に居る覚悟決めてんの。今更、そんな事を言うなって。」
言葉で覚悟を語るより、行動で、キスで示して欲しいなんて、私のワガママだったみたいだ。
諦めて、外の景色を眺めるように視線を移す。
ゴンドラは、頂点に近付いていた。
「…小熊。」
呼ばれた事に反応して、反射的に振り返る。
唇に、何か柔らかいものが触れた。
近くにある、黒尾さんの顔は、してやったり、とか言い出しそうに笑っている。
「丁度、天辺だったろ?お姫様に、王子様が永遠の愛を誓ってやるよ。」
嬉しいような、恥ずかしいような。
どうすれば良いか分からなくなって。
「黒尾さん、大好きです!」
語彙力ないと、我ながら思うけど、精一杯の気持ちを伝えて。
恋人になった、その人の胸に抱き着いた。
case1‐end.‐