第16章 戦いの後で
《_暁_》
『…初代…?』
懐かしい声…10年ぶりだろうか。目を開くと、そこは真っ白な空間で、目の前にはマスターメイビスが立っていた。
《随分と無茶をしましたね。貴女らしいです》
『私らしい…ですか』
《ええ。貴女はいつもどこか怪我をして帰ってきます。そして…それは自分の不注意ではなく、誰かを守った為についた傷でした》
『…今回は不注意の方です。私は、誰一人守れなかった。私はまだまだ未熟者です』
八雲は悔しげにくちびるを噛む。それを見たメイビスは、八雲に近づくと…
《えいっ》(バチン)
『!?いっ…』
デコピンをした。
驚きと痛みで思わず尻もちをついてしまった八雲。そんな八雲を腰に手を当てて胸を張るメイビス。
《貴女をそんなネガティブな子に育てた覚えはありません!》
『…育ててくれた覚えもありませんけど』
《表現です!》
『…ふふっ』
相変わらずな態度に思わず笑ってしまう。メイビスもその様子を見る見てにこりと微笑み、八雲に慈愛の眼差しを向ける。
《やっと笑ってくれましたね》
『ご心配をおかけしました。もう大丈夫です』
すっくと立ち上がり、真正面からメイビスを見つめ返す。
《それでこそFAIRYTAILの魔導士です。…さて。貴女に一つ、重大な話があります》
『はい』
《…貴女はあちらの世界で、敵の疑いを持たれています。既に気付いていましたね?》
『薄々は…百も、その件で調べ物をしていたようですし。恐らく私の身柄は病院で隔離されている、と言った所でしょうか』
《ええ…》
メイビスが八雲の言葉に頷く。そして真剣な表情で考え込み始めた。
《実はゼレフとも話し合っていて…これといった決め手は無いのですが…いえ、これしか有り得ません》
『初代…どういう事ですか?』
《誰かが貴女の存在を危惧し、陥れようとしています》