第47章 【深緑色】デイドリーム
――――…
こうして
私達の職場体験はどこか不完全燃焼のまま事を終えた。
間違いなく私達だ。
そう、何故か私も終わったんだ。
『君の職場体験だが
そのまま3人が退院するまで看病する
と言う事で話を付けておいたワン。』
「え!?」
その日の夕方
面構署長からの電話に私は驚嘆の声を上げた。
3人は致し方ないことだと思う。
この怪我じゃ職場体験は続けられない。
だけど私は――…
「どういうことですか?
ここは病院ですよ?」
怪我も病気もない。
別にここに居なきゃいけない理由なんて何一つない。
お世話がどうのだなんて言われても
私が居なくたって看護師さんがしてくれるわけだし。
そりゃ、ね?
身内として代わりにお世話すれば
普通は助かるんだろうけど…。
患者が将来有望なヒーローの卵。
しかも雄英の生徒、となると……。
スマホを片手に
チラリその怪我人たちを横目で伺い見た。
「轟さーん、はい、お熱量りましょうねーっ?」
「あ、はい…。」
「飯田さん、お薬でーすっ!」
「は、はいッ」
「緑谷さんっ今日入浴どうされますかぁ?」
「お、お願いします…。」
師長さんはともかく
若い看護師さんたちの空気の色は桃色だ。
語尾にハートマークが見える。
絶対率先して看護してくれてる。
こんなのどう考えたって
「私、居ない方が良さそうなんですけど…?」
邪魔でしかないでしょう。
所詮私はここの人間じゃない
知識はあったって限界があると言うものだ…。
なのに言う
根拠のない自信を振りかざして。
『そんな事ある筈がないんだワン
その方が都合がいいんだワン。』
「都合って…誰にですか!?」
そう問えば
ミュートにされた?って画面を確認したくなる程の間を空けて
重苦しい声が返って来た。
『………君なら察してくれると信じているワン。』
ホントに
誰だ。
でもまぁ…
腑に落ちない部分は多くあったけど
なんか3人にそれを伝えたら
ものすごく喜んでくれたから
「頼むハイリ、居てくれ。」
「その方がすごく助かるぞ!」
「楠梨さんっお願いしますっ!!」
というか
頭下げられちゃったから
なんとなくそんな感じで纏まった。
実のところ私の職場体験が
一番不完全燃焼だったと思う。