第47章 【深緑色】デイドリーム
蔦が屋根を覆う如く
私を覆う
背に掛かる焦凍の重みは
今までで一番大きかった
これ程に抑えつけられながら
厚くないマットに身を埋めながら手足は思いの外自由。
抵抗しようと思えばできた――…
『やっと二人きりだ…。』
これが焦凍の第一声。
二人の足音を遠くに聞きながら囁かれた一言には、語弊があった。
彼らが出ていったからっていつ帰って来るのかわからない。
看護師さんとか、医師とか誰かやって来るかわからない。
署長さんたちだって戻ってくるかもしれないし、万が一教師…担任が様子を見に来たりしたら…
(言い訳のし様が……)
頭では駄目だって思ってたの
今も思ってる
なのに躰が…言う事を聞かなかった。
耳の裏側に熱い吐息が触れる度「もっともっと」と身が叫ぶ。
まるで「離さない」とでも言いたげにお腹の裏側が引きつって彼を繋ぎ止めようとする。
「ぁっ…ぅっ…ぅぁ…ッ」
緩い律動に視界が揺れる度
シーツに顔を押し当てても潰えることのない声を必死に噛み砕いてた。
だって抑えられないの
指先も爪先も歯の根も脳も
全身が歓喜に奮えるの
中を抉る熱
背に触れる鼓動
肌を奮わす吐息
その全てが肌を通して奮わせる
(生きてる……。)
嬉しかったの
今もこうして触れ合えるって事が
嬉しかった。
勿論どんな顔してるのか見たいと思ったよ
こんな体勢じゃ
どんな顔してるかなんて見えないから…
なのに感じるの
力無く放りだした手
そこに重ねられた手に力が込められる度
その指先が奮える度
(余裕、ない…?)
ってね
感じるの。
「ハァ…ハイリ…ッ」
鼓膜を揺さぶる低音は今日、すごく掠れてる。
息の荒さが物語る、飢餓とも言える欲。
ちゅぷ…と音がして
耳たぶに柔らかなものが吸い付いた
縁をなぞり中に侵入してくる舌は
渇きを満たそうとしてるかのよう…。
(どう、したんだろ…)
なんだか本当に侵食されていくようで
トロンとした目をもう少しだけ開いた。
重ねられた大きな手
痛いくらい握りしめられてもう、血管が浮き出てる。
ガリガリ音がする
これは
私が削られていく音…なのかな。
絡められた指がシーツを掻いて、掌に食い込んでいく様を揺れる視界で見つめていた。