第41章 【深緑色】自己CHIYU
「ちょっと誤解されてるみたいだけどぉ
もう解けた…よね?」
「ルセェ…益々深まる一方だクソがッ!」
「は~傷付くなぁ…。」
両手を上げ首を振り
やれやれと息をつく
素振りは傷付いていようが目が笑ってやがる
なんなんだコイツ
何かの“個性”か?
ドクリ、音を増す心音には覚えがあった
初めてハイリに会った時も
似たような感覚に陥った。
見えねぇモンに対する「おそれ」
ただ意味が違う
感情が違う
「畏れ」と「恐れ」
あん時のハイリには無かったモン
コイツに見える禍々しさは間違いなく
(悪意だろ…。)
こんな奴がこのガッコの生徒だと思うと身が凍る
ゴクリ、ノドが鳴った
心臓の音もクソデケェ
グラつく視界が霞み始めて
右手で前髪を掴んだ
出た声は…掠れたモンだった
「テメェ…何しやがったっ!!」
「また怒鳴る…って言ってもぉ
もう、大声は出ない…みたいだねっ?」
クスクス笑う
そんな微かな息の音が頭ン中で乱反射してるみてぇだ
ウルセェ…
重てぇ…
脳幹から首筋にかけての鈍痛に
視界が暗転していく
掴んだ頭皮に爪を立て
頭を振れど変わりゃしねぇ
ただ、闇一色の世界で声が女の響くだけだ
「大丈夫、私は爆豪くんの味方、だよ?」
何重にも声が重なって
女の言葉は笑い声かのように脳内でこだまする
(違ぇだろうがッ…クソッ!!)
必要ねぇんだ
味方なんざ要らねぇ
テメェの傷くれぇ自分で何とかする
「私はただ――――――……。」
キンと響き渡った耳鳴りが
女の声まで掻き消した
ただ、何だ
俺に何をした
アイツに何するつもりだてめェ
どんだけ叫ぼうが音にならねぇ
自由の利かねぇ水中で
もがけどもがけど浮上できねぇ
底の知れねぇ不快に沈みながら
握りしめた爪が掌に食い込む感覚だけが神経を刺激する
見えねぇ
聞こえねぇ
振った筈の頭はもう動きゃしねぇ
力が抜けていく
やっと浮上したかのように身は軽くなったってのに
そこで全ての色も音も潰えちまった。