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【ヒロアカ】UAシンドローム【轟焦凍R18】

第40章 【深緑色】secret cancer




昨日の俺なら
気付けなかったかもしれねぇ
平和ボケした頭に
少しだけ寛容になった精神

今朝の俺なら
気付けなかったかもしれねぇ
自分の事よりハイリのこと
抑えると言う事を覚えた自我は
爪も牙も捥がれた獣と同じだ。

今、この時じゃなきゃ気づかなかった

爆豪に抱きしめられ
抱き抱えられ寝かされた
この場所じゃなきゃ

腹の底で頭をもたげた感情と
ハイリの瞳に宿る感情は
恐らく同じモン…なんだろう。

嬉しくねぇハズがねぇ


(まさかコイツが…な。)


想像もしてなかった
ハイリがこんな目をするなんざ
思いもしなかった。

目の前で揺れ惑う不安に口端が上がる
高揚のまま掬い上げた顎は従順だった

だが
目は出来るだけ合わせたくねぇようだ

戸惑ってんのか
バツが悪いのか

長い睫毛に縁どられた瞳は
合わせどもすぐに逸らされる

見た事のない表情に
笑みは自然と漏れ出でた


(しょうがねぇか…)


コイツの性分を考えりゃ
それこそ一番表に出したくねぇ感情だろう

自分の我を最優先させる
それは――…
ヒーローとしてあるまじき性分

ヒーローの何たるか叩きこまれたハイリが
受け入れ難いのはわからないでもねぇ

体育祭の夜といい
今日といい
ハイリはどんどん変わっていく


(喜ばしいことだ。)


自分に正直に
感情に素直に

俺よりはるかに大人びていると思っていた女は
今や夕暮れの街に取り残された迷子の様だ。

涙を溜めて
不安に身を縮めている

大人の倫理なんか要らねぇ
俺等は社会的に見りゃまだガキだ

怒る権利も
泣く権利も
甘える権利も

お前はちゃんと持っている。


「お前はもう少し我儘になって良い。」


俺の言葉に
再び視線が絡み合う

惑う視線はふらふらと鼻先を彷徨って
ゆったりとした瞬きと共に俺へと定められた。

躊躇いがちに開いた口が
微かに動く


「あのこ…だれ?」


吐き出した言葉より
しゃくり上げた息の方がはるかに大きく響く
静かで狭い密室

ユラリ
感情が膝を立てた

徐に立ち上がったそれは
ハイリにとってはマイナスでしかないモン


「まだ、言えねぇ…。」


別に教えたって良かった

ただ今のハイリを堪能したい
それだけで意地の悪い答えを選択した。

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