第5章 【桜色】桃色診断書
~Side轟~
ハイリの事は可能な限り知りたい。
複雑な事情がある事は知ってるつもりだったが
それにしてもこれは無神経だった。
やはり俺は人との距離の取り方がおかしいらしい。
浮き出た後悔は鮮明だ、
だが傍らのハイリは気にするなとすらもう言わず、
何事も無かったかのようにただ笑っている。
ここまで自然体で居られりゃ
誰だってホッとする所なんだろうが
俺は一昨日、確かに聞いたんだ
『だって、お母さんに会ってないんでしょう?
私だったら寂しいもん。』
自分ではっきり
寂しいって言ってんじゃねぇか。
思えばこいつの口から出る保護者の名は
全て父親だった。
少し考えりゃわかりそうなのに
どれだけ浮かれてたのかと…
ハイリの事情も知らずに
こんな言葉を言わせた自分に腹が立つ。
もしかしたらハイリは
俺に自身を重ねたのかもしれねえ…
そう思えば、色々と納得できる気がした。
そして恐らく、コイツの性格上これ以上詫びるのは愚策だ。
そう考えて、今の思いに蓋をする。
ここからはハイリが自ら語るようになってくれた時に
詫びるべきだと思った。