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【ヒロアカ】UAシンドローム【轟焦凍R18】

第40章 【深緑色】secret cancer




聴き間違える筈のない声に振り返ると
そこにいたのは見慣れた亜麻色

爆豪と合った目は
温度の無いまま逸らされた。

侮蔑を湛えた冷めた赤

いつもより褪せた色に
凍らされたかのように身は固まった。


(…………っ)


とうに消えた二つの背を見つめたまま
胸を占める不快な感情へと首を傾げる

何をイマサラ
あの男がハイリを狙ってんのは
今に始まった事じゃねぇ

入学直後から今日に至るまで
それこそ不憫だと同情した事すらあったくれぇだ

譲るつもりなんざ毛頭ねぇが


(こんな光景散々見て来たはずだ…)


なのに何故
今更こんなにも動揺してんだ…?

恐らくは
あの言葉の所為

過ぎる記憶は新しい記憶

カラリと笑うハイリの声と
困ったような笑顔



『わりィ、まただ
先に行っててくれ…。』

『だいじょーぶ!
お昼休みは仮眠取ろうと思ってたから!』

『飯は食わねぇのか?』

『ん…じゃぁ15分だけ
寝たら食堂に行くよ!』



今日は寝てないからと
頭を掻きながら笑っていた

昼休みが始まると同時に交わした会話への矛盾だ。

居るはずのないハイリがここに居る
それどころか
爆豪に手を引かれて出ていった…


眠れなかったのか?
元から寝る気なんざなかったか?


(どっちにしろ些細な矛盾だ。)


どれ程そう言ってきかせようが体は動かねぇ
反して心臓の動きは忙しなく
それ以上に脳内は高速に回る

ようやく動いた手が
容赦なく自分の髪を掴んだ

フッと漏れ出る苦い笑み


(仏心なんざ出すもんじゃねぇ、な。)


これが焦燥というもんか
油断してる間に掻っ攫われちまう

目の前を過ぎった男の肩を掴んだ手は
どれ程の力が籠っていただろうか…


「わりぃ…。」


女に詫びたのか
男に詫びたのか
既にわからねぇ

掴んだ肩を押しのけながら
足はもう出口に向かっていた。









「どういうことか説明しろ…。」








駆けた先
覚えのある場所で目に飛び込んできたのは
爆豪の腕に抱かれる最愛の女の姿

完全に身を預けた小さな背は
俺の声に反応も見せず
それどころか微動だにしねぇ

静かな深緑に音が一つ
自分でも耳を疑う程、低い声が出た。





「事と次第によっちゃ容赦しねぇ…」





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