第35章 【空色】勘違いパンデミック
さぁさぁ皆様お立合い
覚えているだろうかあの宣言
そう、全てはタイミング
心身共に削られた体育祭後に起こるのは
祭りの後の打上げ花火か
今知らされる後の祭りか
勘違いが勘違いを呼ぶ
重ねに重ね、絡まった
あのすれ違いが今――…開幕!
それは放課後に起こった出来事だった
至上最短の選手宣誓で始まった雄英体育祭
一年の部。
四方八方からブーイングを受けたその生徒は
見事伏線の回収を果たした。
『以上で全ての競技が終了!!
今年度雄英体育祭1年』
なんとも見るに堪えない1位ではあったが
『優勝は―――――……』
3つ並んだ表彰台
順位ごとに高さの違う丸階段
3と書かれた台に立つは常闇踏陰
同率3位にもう一人飯田がいたが
家庭の事情で早退となっていた。
そして2位
1位を挟んで常闇の反対側に立つのは轟焦凍
優勝者の穿つ視線に気付いていないのか
気付いていても無視しているのか
視線一つ寄こさずただ静かに立つ
そして一番高い中央の台に立つ…
いや、縛り付けられていたのは
紛れもなく今期の優勝者
優勝 爆豪勝己
納得できる訳がない
不本意な勝ちで終わった決勝戦
対戦相手の轟は
勝利を諦めるが如く一度出した炎を収めたのだ
緑谷には使った炎を自分を前にして消した
舐め腐ったとも取れる行動
怒りを露わにした爆豪は
セメントスお手製の衝立に鎖で雁字搦めにされたまま
猿轡を噛まされるという
なんとも締まらぬ様で隣に立つ轟に唸りを上げていた
No.1ヒーローオールマイトからのメダル授与
誰もが羨む表彰式は
例年に比べざわつきが見られる程
そんな少年が
体育祭を終えた教室で
平静を保っているはずがない
その目は未だ吊り上がり
眼なんてどこにもない
感情の荒波は脳天からつま先まで
言葉なくとも表れていた
夕日が差し込み茜色に染め上がる校舎
教室内は静かなものだ
担任、相澤の声だけが静かに通っていく
「おつかれっつうことで
明日、明後日は休校だ」
事が起こったのはこの後だ
担任によって締めくくられたHRの後
「プロからの指名等をこっちでまとめて休み明けに発表する
ドキドキしながらしっかり休んでおけ」
それは言うなれば
すれ違いがもたらす言葉遊びの末路だった