第34章 【空色】傷跡のキセキ
くるくる絡まった細い糸
なりたい自分になるまでに
あとどれだけの結び目があるんだろう
それはどんな形をしてて
どんな色なんだろう
私達が進む道には
壁が潰える事なんてきっとない
だから
だからね
「ずっと側に居るよ
だから一緒に考えようね。」
温かな雫が肩を濡らす
背に回された腕の力がどんどん強くなっていく
「ああ…」と囁かれたその声は
声と言える程、音を成してはいなかった
「なんか今日、俺が甘えてばっかだな。」
「いいよ、たまには甘やかされてよ。」
静かな選手控室
ドアの向こう側では
時折声が近付いて遠のいていく
見ぬフリしていた肩の揺れは
次第にどんどん大きなものになっていって
クツクツと笑いをかみ殺し始めた頃には
私も一緒に肩を揺らしていた
右肩の重みが去ると
濡れた肩が空気に触れてひんやりと冷えていく
次に絡んだ視線
焦凍の表情は見た事ないくらい柔らかくて
蕩けちゃいそうなくらいで
なんだか今、初めて出逢ったみたい
優しい焦凍を私は知ってる
なんて思ってたけど全然違う
ホント、変わったんだなぁって
(あんなに、頑固だったのに…。)
それって…
奇跡って言っても良いんじゃない?
悪戯っ子の様な表情すら嬉しくて
身体の隙間、0cm
耳元で囁かれた声に
クスと笑う
「たまにはじゃねぇ、が
今日は……甘やかして貰う。」
ね、私
今凄い事に気付いちゃったよ
「うん…任せてくださいな。」
軌跡の先にあるのは
きっと奇跡だよ
だから一緒に越えて行こうね!