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【ヒロアカ】UAシンドローム【轟焦凍R18】

第32章 【空色】KT 1℃


~Side轟~


声にならない不満が
溜め息と共に漏れた

先日と同じ雑木林
同じ木に背を預けて座り
木々の隙間から小さく見える空を仰ぐ


(会いてぇな…。)


何の為の誓約かわからねぇ
守れなかったから自分に制約でも課してるつもりか

使わねぇと決めた左を使った自分に、ただ苛立つ
それだけの理由で唯一の連絡手段を控室に置いてきた

そうでもしねぇと
きっと連絡しちまうだろうから

1位を素直に喜べねぇのは
自業自得だ。


(気圧された…。)


悪寒が走った
無意識に、左側を使っちまうほどに

なんでここに来たのか
言うまでもねぇ

一週間前不思議と安眠できたここに来れば
少しは癒されるかと思っただけだ。

こんな所で一人考え耽る俺を
ハイリはどう思うだろうか

アイツの事だ
きっと呆れて笑うんだろう

「何やってんの?」位は言いそうだ

それでもやっぱ
本音ってのはそう簡単に消せるモンじゃねぇ


「ハイリ…。」


二回目の願いは口に出た

その所為かもしれねぇ

願いってのは
案外
簡単に届くモンなんだ…と




「はぁい?」




右手後方からの声に
一瞬幻聴かと耳を疑った

振り返れば
木の幹からひょっこり顔を出しているハイリ

丸い目を僅かに伏せ
光に透けた睫毛が頬に影を作る

ふわり揺れる亜麻色の髪が
木漏れ日に色を変え
柔らかな鳥の子色に輝いた


「ハイリ?」


思わず
もう一度名を呼んだ


「なーにやってんの?
 それにどしたの?
 お化けにでも会ったみたいな顔して…。」


「足あるよ?」なんて言いながら
眉を下げてクスクス笑う

幽霊じゃねぇ

思わず確認したくなったのは
その背に羽があったように見えたから

着てんのは俺と同じ雄英のジャージだってのに
白い衣を纏っているように見えたから

だが確かにここに居んのはハイリで
手を伸ばして触れる布地は俺が着てんのと同じモンで


初めて知った


「本物の天使には羽、生えてねぇんだな。」


何の絵本で呼んだのか
何処かの絵画で見かけたのか

実在しないと思っていたそれは
いつも隣で笑ってる奴だったって事

呟いた本音に
亜麻色の瞳は大きく見開かれ
パチパチと瞬きを繰り返した。


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