第4章 【桜色】毒占欲 陽性
~Sideハイリ~
「痛かったか?」
私の不満がそこにあると思っているのか
宥める様に頭を撫でられると不満なんて言えなくなってしまう。
実際、好きな人に当たり前の様に甘やかされて
キスされた上に
所有物であるかのようにキスマークまでつけられて
騒ぎ立ててはみたものの、私は結構喜んでいる。
ただ
何でこんな事をするのかちゃんと言葉が欲しいと思うのは
私のワガママなのだろうか……?
見上げた彼の頭には、もはや疑問符しか見えない。
きっと私が何に対して悩んでるのか
全く分からないのだろう。
「大丈夫、痛くないよ。」
さっさと告白しておけば良かった。
なんか今更感あり過ぎて逆に言いづらいし、聞くのはもっと無理だ。
安心して抱きついてくる轟くんとの関係もちょっとわからなくなってきた。
これを当たり前の距離と受け止めていいんだろうか?
でも、まぁ……
「ハイリ。」
「はぃ…なんでしょう?」
「腹減った。」
不意に顔を覗きこまれて見つめ返す。
昨日と打って変わって今の轟くんの目は凄く優しい。
(今はすごくいい表情してるから、いっか。)
良いんだ、少なくとも今のこの人に負の感情は見当たらない。
こんな顔を見てしまったら、自分の悩みなんて小さすぎるものだ。そう思えば飲み込める気がした。
「そだね、買い物行こっか。
何か食べたいのある?」
「ハイリだな。」
「それは―……どうだろうな。」
ただ、
やっぱ関係がはっきりしない事には
これ以上先に進む勇気は持てそうにない…。
入学二日目。
波に荒らされまくった一日は
ようやく深いため息の元、終わろうとしていた。