第27章 【空色】自性感情症
~Side轟~
どんな顔をしているつもりなのか知らねぇが
まだ理性があると思っていた瞳に
そんなモン見当たらなかった。
「しょ、と…。」
いつの間に堕ちたのか
ねだるその目に見入いっちまう
ただでさえ下半身に集中していた熱が
疼きだした。
「…ん?」
ハイリのおねだりには基本言葉が無い
問い返せど視線で訴えかけてくるだけだ
察しろと言いてぇんだろう
わかってるクセに…くらいは思ってそうだ
赤く染まりきった肌に涙を溜めた瞳
瞬きする度に零れる雫は涙か水滴か
頬伝い顎から落ちて、視界の外へと逃げていく。
半開きの口から出てくるのは
熱い吐息ばかり
こういう恥じらう様は嫌いじゃねぇが
だからこそ
言わせたくなる。
ふやけた指を引き抜いて
肩越しに振り向いていた身体を
くるりと反転させる
急く気持ちを押しやって
壁へと付けた背は一度だけぴくりと跳ねた
「どうして欲しい?」
唇が触れるほどに顔を寄せると
更に紅が増す
しがみ付く様に絡められた腕が背を滑り
またしっかと巻き付いてくる
何をねだってるなんざ
聞くまでもなくわかってる
ただ
俺が聞きてぇだけだ
求められている
実感が欲しいだけだ。
ついでにハイリの恥じらいに染まる様を見られんなら
文句なし…だろ
言葉の無い間にも
ガクガクと震えはじめた足
訴えかけてくる熱い視線に
わざと首を傾げて見れせれば
ハイリは溜めた涙をぽろぽろと零しながら
悲しそうに眉を下げる
(可愛い…)
意図してやってる訳じゃねぇ
わかってるが
誘うのが本当に上手い。
素直に物を言えねぇクセに
身体だけは素直なヤツ。
ゲームにすらならねぇ
先に動いた方が負ける根比べ。
勝つのは俺かハイリか
壁に寄った俺らには
もうシャワーの湯は殆ど当たってねえ
その音を聞きながら欲を湛えた視線を絡ませ合う
バスタブに溜めていた湯は
もうとっくに止まっている様だった。