第18章 ♦番外編♦ 紅白中毒症
♡おまけ♡
翌朝、冷蔵庫を開けた私は
見覚えのないお皿を手に取って
「え……なんで?」
誰も拾うはずのない独り言を呟いた。
綺麗にラップが掛けられたそのお皿には
昨日全部食べてしまったハズのイチゴの薔薇が6個
小さなメモを囲むようにして綺麗に並んでいた。
「俺もお前に夢中だ。」
読み上げたのは私の声じゃない。
振り返らずともどんな顔をしているのかわかったけど
振り返らずにはいられない。
なんだか久々に憎たらしく思えてくる
この余裕の笑み。
「なんで知ってるのっ!?」
「ま、こんなメモ見付けりゃ
返したくもなる。」
その手にあるのは
昨日散々睨めっこして
間違いなくここのごみ箱に捨てたはずのメモ
「ちょ、返してっ!」
「これは俺ンだ。
お前はこっち。」
お皿のメモを掌に乗せられて
自分の手がどんなに熱くなっているのか初めて知った。
昨日のケーキの時点ですでにバレていたのだろう…
私が寝てる間に作ったのだろう…
あわよくば気付いてくれたら
とか思ってたけど
バレたらバレたで恥ずかしい。
その上やり返されてしまうなんて……
「うぅ…。」
唸るペットの頭を
ご主人様がわしゃわしゃと撫でる。
「お前、隠し事下手だよな。」
「隠してた訳じゃないっ!」
「わかったわかった。」
撫で終わった大きな手は最後にポンと頭を叩いて
私の頬をなぞった。
「嬉しかった
大事にする。」
「…………っ、うん。」
少しは驚かせたい
そう思っていた私が甘かった。
素直さも、隠し事も
彼の方が一枚も二枚も上手だ。
いつか、追いつけるだろうか
いつも余裕で私を翻弄し続けてくれちゃう
チートな私の彼は今日も絶好調だ。
(いつかは…ね。)
一人でイチゴの薔薇を作っている焦凍を想像しながら
そんな未来に微笑んだ――……。
紅白中毒症 END