第17章 【琥珀色】訪問診療録(前編)
それはとある連休の夜の事。
誰が言い出したかもわからない
「親睦会を兼ねて女子会をしよう!」
その一言に、持ち前の行動力も相まって
クラスの女の子7人で私たちはとある旅館に来ていた。
大正時代からあると言う建物は厳かにも影がありどこか禍々しい。
昼間見た時はこの古さにわびさびを感じた気で居たが、今じゃただのお化け屋敷のように思えてしまう。
スマホを握りしめ順番に電話を掛けていく。
だけど誰も出はしない。
無機質で単一なコール音が鳴り続けるのみ。
(どうして…こんな事に。)
どうせならあの時、意地でも付いて行くんだった……。
それは夕食後の事。
お土産コーナーでクラスに何を買って帰ろうか
7人頭を寄せ合い悩んでいると、女将さんが「旅館から少し出た所に、とても品揃えのいいお土産屋さんがある」と教えてくれた。
黙っていれば旅館の利益にもあるだろうに、なんて優しい人なのだろう。
感動した私たちは、今から下見に行こうと言う話になった。
疲れが出てしまった3人を残して4人が下見へ
私を含めた3人はフロントで借りたトランプをしながら4人を待つ。だけど一向に帰ってこない。
「ねぇ、遅くない?」
「そうね、私ちょっと様子を見に行ってくるわ。」
「こんな遅くに危ないよ! 皆で行こう?」
「それは駄目よ。何かあった時の為に1人は残らなくちゃ。」
じゃんけんの結果、私は一人、ここで待っている。
あれから…何時間経っただろうか。
既にスマホの時計は2時を過ぎてしまった。
さっきフロントに行ったのが30分前。その時は何の連絡も来てないみたいだった。
(早く帰ってきて…っ、誰でもいいから電話に出て…っ)
零れそうになる涙をこらえながらスマホを握る。
するとパタリ、遠くでそんな音がした。